がんと向き合う

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河村 裕美さん
河村 裕美さん
(かわむら・ひろみ)
熱海市出身。静岡県庁勤務。1999年(32歳)に結婚。結婚して1週間後に子宮頸がんを宣告され、手術を受ける。闘病中の経験から、女性特有のがんサポートグループ「オレンジティ」を設立。子宮頸がんの啓発活動ティール&ホワイトリボンキャンペーン理事長。著書に『グローバルマザー』(2012年 静岡新聞社刊)。
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5手術前に知っておくべきこと

「自分の体に起こりうるすべてのことについて、手術前に聞いておいたほうがいいと思います。聞くのは辛いですが、やはりそれは聞いておいたほうが、後々になってよかったと思うと思います。

いちばんいいのは、手術の前に医療者の方たちがきちんと伝えておくことで、それが非常に重要なのです。患者会でとったアンケートでは、数的にはそれほどたくさんではなかったのですが、最初にリンパ浮腫があると言われた人と言われていない人とでは、言われた人たちはわりとリンパ浮腫が出ていなくて、言われていない人たちに浮腫が出ていました。言われた人たちは『まずいな・・』ということがわかっているので、自分で何かしらやっているのです。本でマッサージのやり方を見たり、オレンジティに来て1年に1回はきちんと習ったり、もしくは早めに(弾性)ストッキングを履いて運動なさったり。重いものをもたないなどいくつかの注意点があり、その注意点を守っていたりしました。それでもしかしたら発症しないのではと思っています。たぶん、あらかじめ正しい知識を手術前の冷静なうちにきちんと聞いて知っていると、術後に自分自身がそうなったときに、変わってしまった体と付き合っていく方法について、自分の中にアンテナが立って、それでいろいろ調べるのではないでしょうか。」

●夫と話し合えた重要な15分間

「子宮頸がん(の手術を)をすると膣を途中で切ってしまうので、正常なセックスができなくなるのです。そうすると男性のほうの満足度のようなものが下がってしまうので、そこはいかにお互い乗り越えるかということを手術前に話しておいたほうがいいです。手術をしたあとだと、家族も自分たちも何か高揚していて、『手術したんだ、がんは治ったんだ』と思い、そのあとで障害が出てきたときに、その障害に向き合うのがなかなか難しいのです。その辺はやはりたいへんでも術前にきちんと聞いておくべき、家族でそのことについて向き合っておくべきだと思いました。

先生が夫と私を呼んで、セックスについてそうした問題が起こるということと、それがどういうことかという話をされて、その後、個室で2人で話す時間をいただきました。その時間は今考えるととても重要で、私たちが今こうして普通に夫婦でいられるのも、あのときの15分があったからかなと思うくらい、重要な時間でした。

そのときは、この問題が起きて一度は離婚を考えたことなんかを夫と話しました。夫は、子供はもういいから、お互い2人で生きていこう、と言ってくれました。セックスの問題についても、先生からは『難しくても、今はそれなりにいいものがある』というお話だったので、そういったことも話をしました。子供をどうするかということについて、きちんと話をなさっていない方も会員のなかにはいらっしゃいます。何かずっとモヤモヤ引きずってしまうような感じで、旦那さんにいまだに聞けずにいるという方もいます。うちは、卵巣、卵子を凍結するかということを非常に悩みました。でも今、日本の倫理ではやはりそれはいけないことですし、代理母といってもお金がなくてできないし、いろいろ悩んだあげく、結局夫婦で話し合って、子供はいらないというふうに決めました。まだその辺はいまだに何かひっかかるものがありますよね。

その先生がよかったのか、病院がよかったのかはわからないのですが、まずその時間がいただけたということが非常に重要でした。なかなかやはり2人になるというのは難しく、病室で話をするのも憚られましたが、ただもう先生が向き合う時間を強制的にくれたような感じで、あれは本当によかったなと思います。」

●先生とのコミュニケーション

「私は結構ハキハキものを言う患者だったので、それこそ疑問に思うと書き留めておいて先生に渡したり、インターネットで海外の文献を探してきて『これはどうか』といろいろ聞いたりしていたのですが、なかなか先生に聞けない方、性格として聞けない方たちもいます。先生はいつも、何かお疲れになっている様子を見せながらいらっしゃるので、聞きづらい方たちもたくさんいて、コミュニケーションをとりにくいのです。それは個人の性格によるところがすごく大きいのですが、私はたまたまコミュニケーションをとりやすい性格だったので、先生に聞くと、先生は本当に次の日に調べてもってきてくれました。それで『これはだめだ』とか『これはもう今やられていない』ときちんと説明してくださるので、非常に納得して治療を受けることができました。」