「一番気をつけていることは、やっぱり感謝の気持ちは相手にわかるように示さないとだめだなと思ったんです。と言うのは、私は、新婚で病気に罹ってしまって、それがまた一生続くっていうことで、自分の中にすごい引け目みたいなのがあって、なかなか、こういうふうに辛い、こういうふうにしんどいっていうのをはっきり主人にぶつけられなくてここまできてしまったんです。でも主人にしたら、『そういうのがすごく他人行儀でみずくさく感じる』と。で『家族やねんから、しんどいときには自分に真っ先に相談してほしいし、普段でも、こうしてほしいと思うことがあったらちゃんと言ってくれないと俺も困る』と、そういうふうに言ってくれているいんです。最初はなかなか遠慮して言えなかったことが『ごめん、ちょっと今日しんどいから晩御飯はできない』ってはっきり言えるようになって。そしたら主人も『わかった、今日は食べてくるわ』とか、そういうふうに対処してくれています。なので、なるべく自分が無理をしないとか、嘘をつかないっていうのは要るなと思いました。
ごまかすみたいなことはあったんですね、正直。病気になるかならへんかぐらいのときに、私は買い物でストレスを発散する癖がついてしまっていて、それが依存症って呼んでも差し支えないレベルにまで一時期いってしまったんです。でも私がお財布も通帳も一切持っていたので、ゆうたらお金使い放題状態だったんですよ。それで自分の名前で勝手にカードも作って、デパートでバンバン買い物していて。だけど買い物依存て、買う、そのときだけが気持ち良いんですよ。そこの洋服屋さんの紙袋を持って一歩店の外へ出たら『やっちゃったぁ』っていう気持ちになるんですよ。そうやって持って帰るものだから、家でその商品を自分も見たくないし、まして夫に知られたら『これどうしたの』と、なるじゃないですか。で、ずっとごまかしていたんです。1年、2年ぐらいかな。でもそのことが夫にばれたときにものすごく怒られまして。同じ家に住んでいるのに、そういう隠し事っていうのはやっぱり主人にも失礼やなっていうふうに思ったこともあって。だから、家族なんやから、しんどいとかもありがとうとかも、ちゃんと言わないとだめだなあと思いました。」
「近所づきあいは、うちは、マンション住まいなので、同じマンションの人たちとは、エレベーターや廊下でお会いしたら、なるべくこちらから笑顔で『こんにちは〜』って挨拶するようには心がけています。エレベーターでご一緒した場合とかは、世間話をちょっとこっちから振ってみたりとか。ま、つかず離れずですけど、そういう感じで挨拶はしています。」
「友人は、病気のことを知っている人がほとんどですので、約束事とかをこちらの体調不良などで断るときは正直にちゃんと伝えます。あとは家族もですけど、主人にしているように、いつも、私のことを見ていてくれてありがとう、という気持ちはなるべく出すようにしています。」
「(センターの仲間は)友達でもあるし、やっぱり、戦友みたいな、共に戦うという感じがありますね。ちょっと冷たく聞こえるかもしれないんですけど、やっぱりあんまり深入りしすぎないようにと、ちょっと気をつけているんです。お互いに、症状が悪化したときにもたれあっていると、両方が巻き込まれてどんどん下まで落ちていくっていう経験が何度かあったんです。そうすると自分らもしんどいけど、周りがものすごく辛いんですって、見ているのが。
お互いに距離が近すぎると、巻き込みあってしまうんです。ひどい例をとると、一人が自傷したら、じゃあ自分もって、やっちゃうときがあるんですよ、で、そうするともう、家族も、今までがんばって治療にあたってくれた医療スタッフとかも、今まで自分たちは何のためにがんばってきたんだってなるじゃないですか。だからちょっと冷たいようでも、一線引いとかないとだめだなあと思ったんです。お互い、家族がある身でもあるし、やっぱり家族にも迷惑がかかるんですね。例えば、電話番号とかを気軽に教えてしまったら、その人が辛いときに、夜中とか時間を全然無視してかけられることもあるし、ひどいときは夜中に家に来られたりとか、そういうこともあるので。」
「やっぱり嘘をつかないっていうことだと思います。診察のときに、これ言ったらやっぱり先生に怒られるかなあ、ということは再々あるんですけど、怒られるのが嫌やからっていうて隠してしまったら本当の治療にならないなと自分でも最近思うようになったんですね。なので、嘘をつかないっていう事が一番大事かなと思っています。
それが幸せなことに、私は(医療者で)困ったなぁと思うことって、実はあんまりないんです。すごい巡り(合わせ)が良かったのか、先生らからもそんな理不尽なと思ったこともありませんし、看護師さんもほとんどの場合、こちらがいやな気持ちになることはなかったんです。」
「今までの中で、一番、看護師さんにしてもらってうれしかったことなんですけど。実は6回目の入院のときに、ちょっと家族とギクシャクしてしまったことがあったんですね。で、一度ちゃんと家族会議を開いて話し合おうということになりまして。もしかしたら、そのときに、もう別れなければいけないかもしれないっていうそのぐらいの気持ちで臨んだんです。入院中だったので外出届を出したんですけど、そのときに担当してくださっていた看護師さんが、私がものすごい意気消沈した姿で病棟出るのを見て心配になられたんでしょうね。ご自分の勤務時間外にもかかわらず、私が病棟に戻るまでずぅっと待っていてくださって。で、『話し合い、うまくいったんですぅ』って言ったら、『あぁ、良かった』って、もう涙流して安心してくださったことがあったんです。それが、一番、今でも印象に残っています。」