統合失調症と向き合う

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和田千珠子さん
和田千珠子さん
(わだ ちずこ)
1967年生まれ、44歳。大学4年生になる春に幻覚が生じて精神科を受診。同じく精神疾患をもつ夫、今年5歳になる娘との3人暮らし。出産後2年3か月、娘を乳児院に預ける。ある医師との出会いから精神障害をもっていることをオープンにして生きることを決意。現在は、当事者活動(講演)や手芸を楽しみ、地域の支援拠点を活用しながら子育てにも奮闘中である。
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7結婚・妊娠について
Q.ご主人と出会ったきっかけは?

「2006年の3月に、『障害者の支援と自立』というフォーラムがありまして、そこに行ったんですね、私。その時、たまたま珍しく場所を勘違いしていて、違うところに行っちゃったんですよ。そしたら『ここじゃありませんよ、その建物だったらあちらです』って言われて、慌てて行ったんですけど、15分ぐらい遅れてもう始まっていて、席が1箇所しか空いていなかったんですね。

それで、席に座ったら一番前のほうに見知った背中があって、その当時、私の好きな気になっていた方の後ろ姿だと思って、『こんなところまであの人来てるんだ。じゃあ休みの時間に一声かけていこう』とかって思って、とことこと行って声かけたら全く別人で、今の旦那さんで。その時の彼の笑顔がすごくきれいだったので、『間違えてごめんなさい』と言ったら、『いえ、これもご縁ですから』と、なんか訳の分かんないことを答えたけど、ほんとにそれがご縁になっちゃって、私のハートに矢が刺さったような形で…。

(フォーラムが)終わったあと、とことことこって近づいていって、『当事者ですか』と聞いたら『当事者です』と言うので、夜中に電話をかけられたりするとすごく嫌なんだけど、あとアドレスを他の人に教えられるのも嫌なんだけど、そういうことをしないと約束してくれるのであれば、メールアドレスを交換したいんですけど、と自分から行きました。

それで、彼の携帯電話の操作があまりにもへたで、その会場の中で警備員さんが回ってくる時間になっちゃったんですよ。たぶん(午後)6時ぐらいだと思うんですけど。その頃までロビーで携帯電話でアドレスを交換していて、それでまあ2人で駅まで。電車だったので駅で別れて、そのあと、その日のうちに10通ぐらいメールを交換しました。」

Q.妊娠はいつ?

「出会って10日でもうお腹の中に(子どもが)いたという計算になったんですよ、もうびっくりしちゃったんだけど。超促成栽培をやっちゃったんですよねえ。

とにかくびっくりしちゃったとしか言いようがなかったんですよ。普段、生理不順な私が、2日遅れてるぞと思ったんですよ。その時、『え?』と思ったんだけど、薬屋さんで、『もう使っていいですよ』と言われたので、スーパーマーケットのトイレで妊娠判定薬を使ったら陽性反応がピッと出ちゃって。2人でびっくりして慌てて近所の産婦人科に行ったら、エコーで見てもまだ赤ちゃんが発見されないような、赤ちゃんが子宮の中で住むという産室(胎嚢のこと)とか呼ばれる(ところに)、ちょっとエコーの図面で言うとぽっと5ミリ程度黒い点がつく程度なんですけど、そういう状況になっていて…。妊娠5週目で分かっちゃったんですよね。

周り中、『堕ろせ』と言うし。『いや、この命、殺すわけにはいかないだろ』と思って、とにかく何がなんでも産むと言い出したんですよ。」

Q.結婚に対する家族の反応は?

「入籍は(2006年)10月19日です。

(家族は)反対していたけど、私達、親に言うよりも先に入籍しちゃったから。『今日、入籍してきました』と報告をしたんですよ。そしたら母が、『これからはそんなに簡単にはいかないのよ』みたいなことを言っていたけど…。

出会って4日目ぐらいで私、家出をしたんですよ。(夫のところに)行っちゃいました。私、2回家出をしているんですよ。1回目の家出は3日ぐらいで、“障害者の防災”の主催の方にたまたま電話した時に、『障害者の夫婦というのは、周りの人に助けられないと生きていけないから、あなた家に帰りなさい』と怒られて(家に)帰ったんだけど、彼に対するうちの家族の風当たりがあまりに激しくて、『もうこれは一緒に住めないぞ』と思って2回目の家出をして。その時、彼が、『僕は誘拐犯じゃないから』と言って、自宅をうちの家族に話したら、車で一番上の兄貴が追いかけてきて、インターフォン越しの大げんかになって。『48歳にもなってかあちゃんのまんま食っているやつに俺の気持ちは分からねえ』と(夫が)言ったら、兄がすごいショックを受けちゃって。

その頃、うちの兄も常々考えていたらしくて…。大学卒業後、就職したんですけど、こんな安い給料じゃ妻も子どもも育てられないぞと思ったらしくて、一生懸命頑張って、そのうちに2つの会社の社長さんになって、で、『このあたりかな』と思って周りを見渡したら、たくさん周りにいたはずの独身の女性達がまったくいなくなっていて愕然としたというところを彼にその言葉で責められたという形でした。」

Q.子どもを望む方へアドバイスはありますか?

「アドバイスねえ。私ね、できればほんと堕ろしてほしくないんですよ、子どもを。よく講演会で、私、言うんですけど、精神障害の女性はいったい何人の人が、周り中から子どもを堕ろせと言われて、泣く泣く堕ろした人がどれぐらいいるのかなと思った時に、かなりの数いるんじゃないかと思うんですよ。たとえどういうことになろうとも、できれば授かった命というのは、やっぱり堕ろしてほしくないなと思って…。

はい。良かったです、産んで。あの子の笑顔がこの世界になかったらと考えると、ぞっとしますからね、やっぱり。」

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