「いや、先生には言われていないです。たまたま保険に入っていたので、診断書を書いてもらった時に、その当時は、精神分裂病ですよね、今の統合失調症と書いてあったので、『あ、僕は統合失調症なんだ』ということが分かったわけです。」
「ま、鉄格子ですよね、どうしても精神病のイメージって。あと個室が、刑務所の独居房。で、今はないと思うのですが、僕らのトイレというのは、そこで食事とか、睡眠とかとらなければいけないのです。入院した時は冬だったので、悪臭とかはなかったのですけれど、もし入院が夏だったら、食事をとる時に、汚物の臭いの中で食べなければいけないだろうと。
そういう時代の状況だったのですね。今はそういうところは少ないと思うのですが。
制度もありますけれども、制度というのは費用面が多いですよね。あとは先生の人柄だと思うのです、やはり。だから、いい先生に当たれば、予後もいいのではないかなぁと。ただ、相性の悪い先生も中にはいて、その時はやむを得ないので、『すいません、この曜日は通えなくなりました』と言って、自分の合いそうだなという先生の曜日に日にちを変更して通院していました。
(先生との相性は)やはり大きいですね。要は、先生が良ければ、なぜここにいなければいけないのかとか、ちゃんと説明がありますからね。ただここに放り込まれて説明もなかったら、それは本人としては不本意な入院になったと思いますね。」
「必要な人がやればいいのではないかなぁと思うのですけど。僕の場合はロールプレイさえしなくても、ここまで来れたので……。
だから逆に、研修の講師で行った時に、ロールプレイを初めてやったという感じで、職員の方にロールプレイの仕方を教わりました。患者さん役をやったり、PSW(精神保健福祉士)役をやったりして研修が進んでいくと。
ただ、研修というのは、自分のトレーニングにもなりましたよね。『あ、ロールプレイってこんなことなんだ』みたいな。だから自分の治療上のロールプレイではなくて、仕事先でロールプレイを覚えましたけど。
やはり必要なのだなあと。ただ、僕の治療上では必要ないなということで。まあ、考え方でしょうね。僕の起点というのは、主治医が、『あなたは薬を飲んで安定した生活を送るか、薬を飲まないで不安定な生活をしますか、どっちがいいですか?』と聞かれて、僕の判断で、それからどんどん病気が良くなっていった。だから、その先生の一言で、僕は良くなってきたのではないかなと思います。
やはり先生のカウンセリング術を盗んでしまったということですかね。こう言えば、こう言うだろうと答えを予測できるようになったので。先生のカウンセリングが良かったので、友達に、こうした時にはどうしたらいいと思ったら、『こうは考えられない?』というようなアドバイスができるようになった。」
「だからそれが病気の受容ですよね。それは苦しいですよ。あれは病気だったんだということを認めなければいけないわけですからね。
でも、今どうかと考えれば、今はもう落ち着いているわけですよね。だったら『これでいいじゃない』というのと、先ほど言った、この薬を飲んで安定した生活が送れているほうがいいだろうと。だから服薬して、副作用の強い時もありましたけども、我慢して飲んでいたのは正解だったなと思いますね。」