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「先ほどのEMR(内視鏡的粘膜切除術)の病変よりも大きな病変の場合は、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という方法で病変を切除することがあります。一般的にEMRは2cmぐらいまでの病変が対象になりますが、ESDは4〜5cmという大きな病変でも切除することが可能です。
EMRと同じように、病変の粘膜下層に生理食塩水あるいは特殊な薬液を注入して、病変を盛り上げます。そして特殊な電気メスを用いて粘膜を焼いて切って、粘膜下層を切開していきます。病変と正常な粘膜の間を特殊な電気メスを使いながら焼き切っていく切開剥離という方法です。スネアをかけて行うポリペクトミーやEMRとは方法がまったく違うのがおわかりかと思います。この方法は内視鏡治療に非常に慣れている病院・施設でないと現時点ではまだ難しい方法ですので、ESDはそうした施設で行うべきであろうと考えます。
今、病変がとりきれました。EMRよりも粘膜の欠損部が大きくなるわけですが、止血クリップを使って粘膜を縫合する場合もありますし、この場合にはこのままの状態で2〜3週間、自然治癒を待つという形で経過を見ました。粘膜がうまく修復されているかどうかは、後日内視鏡で確認します。
昔は大きな病院で開腹手術で切除したような病変に対しても、このESDという新しい技術を導入することで、お腹を切らないでも切除できるという非常に画期的な技術です。ただし注意しないといけないのは、非常に新しい技術で、技術的にも非常に難しいものですので、ESDを行える専門の施設は現時点では限定されています。」
「非常に表層の病変ですから、外科的な手術(開腹手術)でそこの部分をちゃんと切りとればほぼ治りますし、合併症もないです。ただ外科的に切るということになりますから、痛みが当然伴います。
ESDは、ほとんど痛みは伴いません。開腹しないで済むということで、非常に大きなメリットはあります。しかし、どうしても長時間かかってしまう可能性があるのと、長い時間かかって患部を焼き切ることになりますので、場合によっては腸に穴があくような合併症が起きる可能性があります。そういう観点からも、やはり熟練した内視鏡専門医が治療するべきですし、現時点ではそういう施設に限定して行われている治療法です※。」
※ ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、厚生労働省に認定されている施設でのみ行われる先進医療です。先進医療として認定された医療は、保険適応外のため費用は全額患者の自己負担となりますが、それ以外の費用(診察・検査・投薬・入院料等)は一般の保険診療と同様に扱われます。