「兄が病気(家族性大腸ポリポーシス)をしたのは、今から10年少々前で、私よりあとなんです。私の手術の話をいつも聞いていたから、もう『すべて手に取るように、次はどうなっていくかというのがわかっていた』ので、兄は手術台に上るのを『非常に安心できた』といつも言います。」
「子供たちには、『もうこれはどうすることもできないんだ。おばあちゃんの家系にこのような病気がある。そのためにお父さんはこんな病気になった。そして君たちにも、この可能性が強い。今は大丈夫でも、将来お父さんのような体になる可能性が多分にある』ということは、当時中学生のときに話はしています。それぞれ今結婚していますけど、結婚するときにも、相手の人にもそのことは、本人から言ったみたいです。もう『すまんけどこういう病気がある。どうすることもできない』と。」
「子どもたちも大学病院で定期検診を受けています。長男にその傾向が出ていますね。これも経過観察というか、場合によったら早期に大腸を全部取ってしまうと。
可能性のある人は特に、定期的に大腸内視鏡検査を受ける必要を訴えたいです。注腸造影検査よりもむしろ内視鏡カメラを入れると本当にはっきりわかる。
場所が場所だけにいやだけど、でも早期発見だったら絶対に助かるから、本当に大腸がん、直腸がんは遅行性でゆっくりと進行するから、早期発見で早期治療したらこんな体にならずにすむでしょう。今の医療は、できるだけ自然肛門を残す機能温存という方法の手術に変わってきているし、早くすればそれだけ大きな手術をしなくても内視鏡で取れるので、とにかく検診を受けてほしいです。」
「当時、私が入院している間、奥さんには(ガソリンスタンドの)経営でも負担をかけた。スタッフは人数がいたから、仕事はこなすことはできても、給料を払っていくというのはなかなかたいへんだったはずで、それをよくやってくれたなと思います。
(手術で)痛い目をしたのは私、でも本当に苦しい目をしたのは家族。特に奥さんにはつらい思いをさせた。なんとも言えない。本当に頭が下がる。罪滅ぼしを今しています。でもこうしたことを通して、家族のありがたさがわかりますね、本当に。ひとりじゃ生きていけない。」