がんと向き合う

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藤井文雄 さん
(ふじい・ふみお)
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香川県出身。59歳(1999年)のとき会社の人間ドックで直腸がん(前がん状態)が見つかる。開腹手術を受け、ストーマを造設。3年後、原発性の前立腺がん(ステージT3a)が見つかり、ホルモン治療後、粒子線治療を受ける。現在は副作用を経過観察。2001年より日本オストミー協会兵庫県支部幹事、ピアサポーターとしてオストメイトの相談にのる。趣味は四国などの山歩きと読書(好きな吉村昭、司馬遼太郎はすべて読了)。
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5粒子線治療

「結局、CT下生検(CTで前立腺を見ながら尾骨のあたりから針を刺してで前立腺の細胞を取る)を2回やりました。2回とも針を何度も突き刺して、細胞に届いたのが8本のうち1本ぐらいあったのか。組織に病変はなかったということだったので、泌尿器科での治療はやめにしました。

いろいろ調べたり人に訊いたりして『前立腺がんに対する重粒子線治療を今、治験でやっている』ということで、ウェブを調べて『これやったらいいな』ということでそれに飛びついて、結局お腹を切らずに粒子線治療に踏み切ったわけです。

兵庫県には、炭素線治療と陽子線治療の2つの重粒子線治療を行う施設があり、はじめの頃は陽子線治療の照射をしていました。今は両方ともしています。」

●粒子線治療の副作用

「それから7年ぐらい経ったあと、突然、血尿が出てきました。予知も全く何もなく、いきなりトイレに行くとワインのようなものがドバーっと出てきてびっくりしました。神戸の泌尿器科へ行って膀胱鏡で調べてもらうと、膀胱のある部分が非常にびらんして潰瘍ができているということで、先生に『これは放射線治療の副作用や』と言われました。

粒子線治療にはそういう副作用がたまにあるみたいで、粒子線医療センターにもう一度行って診てもらうと、『100人に3人ぐらいそういう症状がある』ということでした。

粒子線治療では、前立腺に非常に細いビームを照射するんですが、ちょっとずれると膀胱や大腸に当たることもあり、それで血管が破壊されて毛細血管が潰れると、太い血管だけになります。そうすると血管を再生しようと思って血圧が非常に高くなって、破裂するわけです。私の場合、半年ごとにドバーっと血尿が出るような状態なんですね。」

●後遺症に対する高気圧酸素治療

「(その後遺症に対する)治療は、毛細血管が復活しやすいように高気圧酸素治療というのがあるそうです。宇宙船みたいなカプセルの中に入って、酸素の圧力を2気圧にします。普通私たちがいるのは1気圧のところですが、その倍の気圧のカプセルに2〜3時間入るというのを何十回かすると毛細血管が復活するので、『膀胱だけでなく、脳の毛細血管も復活しますよ。これいいですから受けなさい』と言われています。

あるとき、放射線医から電話がかかってきて『もういよいよ入院できるかな』というときに、『高気圧酸素治療のときストーマのパウチをつけておられると、圧力を上げたときに破裂したり、具合の悪いことはありませんか』と訊いてきました。『それはきっちりと空気を抜いたりできますし、大丈夫です』と言うたんですけども、それからあと全く連絡がなく、待っているような状態です。何か心配しているのかもしれません。」