「日本オストミー協会ではピアサポート(同じような立場の人による支援)もしていて、ストーマケアの悩みなどいろんな相談があります。ストーマケア以外では、やはりがんの再発・転移についての相談があります。これはもうついて回りますから。なので、いろいろ医療知識や経験者の知識をずっと聞いておいて、常に自分のスキルを高めて動くということと、相談の受け方もやはり自分なりに研修を受けて高めるようにはしているんです。」
「たとえば、女性で『ストーマだけは絶対に作りたくない』と言うなかなか頑固な方と、生き方について何度か電話で長々と話して、その人が納得して治療を受ける決断をするように少しずつ導いていくというか、気持ちの整理をするお手伝いをする。聞いてみると、その方もストーマを造らない方法などをいろいろ考えて、『病院はどこがいい、ここがいい』と言うんですけど、その方と自分との知識のギャップにすごく落ち込むことがあり、がんも時間との競争なので『そんなことを言うてる暇はないやないの』と思うときがあります。」
「結局、『ストーマを造るの絶対いやや』とか、『ストーマを造らない病院に行きたいから、先生を教えて』と言うんですけども、いちばん根底にあるのは『今、診てもらっている先生が嫌いや』ということですね。ずーっと話していくと『この先生に手術をしてもらいたくない』とそこに落ち着くんです。
それから感情の話ですね。病気そのものを客観的に冷静に見つめて、自分が何かの決断をするという以上に、感情的なものが非常にウェイトが高かったとかね。そういのが浮かび出てくる場合がありますね。その場合は自分自身が納得するかどうか、自分の命がかかっているわけですから、自分が変わる変わらないは自分の判断ですからね。その判断のちょっとでもお役に立つことを私は言わしてもらってますけども。『あなた自身の判断ですから』と言って、『ストーマをつけた場合、こんなことがありますよ』といろんな話をします。
病気については『自分のすべてをあからさまにして、専門の方に見ていただいて、いちばんいい治療をする』、それに尽きると思うんです。関係のないウェイトの低いことばかりに一所懸命になって、肝心なことをおろそかにするのは、人生を生きていくときにもったいないんじゃないか。自分の人生を粗末にしているんじゃないかな、と感じます。」
「私なりに(オストミービジターとしての)研修を受けると、『相談を受けて、ここに踏み入ったらいけない』という事項を教わります。ひとつは『医療に関するアドバイスをしてはなりません』、もうひとつは『いかなるメーカーの製品も推奨してはなりません』というふたつの事項を、はじめの研修で教えられるんです。
しかし今これだけ医療が複雑化・専門化してきています。ネット社会ですから、その知識が誰でも手に入るわけじゃないですか。一般の人でも手に入りますから、『医療知識的なアドバイスをしたらいけませんよ』と言われても、相手のほうがよく知っている場合がありまから、ある程度客観的なことは話をする場合があります。そうしないと、相談者が来ても相談の話ができないですからね。そこら辺が非常に難しいところがあります。
また、こちらの話をきっちり聞いてくれたり、理解してくれたり、自分のことを素直に話してくれたりするのは、人それぞれの固有のつながりというか、相性といいますか。たとえば雰囲気的に話しやすいとか、こういうタイプの人は嫌いとか、結局、感情の面もありますから、相談に来ていただいて、きっちりと話し合いができて、何回もリピーターで来られる方は、以心伝心というか最終的には相性みたいなところに落ち着いてくるんですね。そういう気持ちがしています。」
「“オストメイトになったらマイナスの面ばかり”という風潮があるんですけど、オストメイトだからといって、何も恥ずかしがることはないんです。
兵庫県支部の顧問の先生がよく言われるのは、『人工肛門を作るということは“そのときのあなたの病気に対して医師は最善の処置をして人工肛門になったんですよ”ということを言ってあげたい』ということで、全くその通りだと思います。
『露天風呂や温泉に入りたいけど、入らない』という相談がよくありますけど、そのときは『自信をもったらいいですよ』と言うんです。私たちは一般の人よりも体は清潔なんですから。ひとつの器官がなくて、排泄物は袋にためていて、そこは細菌がついたりする汚いところじゃないですから。ほかに温泉に入っている一般の人より清潔なんですから『安心して入りましょう』と言うんです。
そういうプラスの面もありますから、『否定的なことばっかり考えんと、前向きに考えて暮らしましょう』と言ってあげたいと思いますね。」