7家族ががんになった場合
「今までに経験のないことをはじめて経験するわけですから、家族にとっては対応が難しいと思います。今は変わりましたが、日本の文化では病気について本当のことを本人に知られまいとする風潮がありました。今はなんでも本人に知ってもらうほうがいいというようになってきましたから、本人と真実に基づいて話し合い、その患者さんの気持ちに焦点をあてながら、辛いことも苦しいことも痛いこともわかり合うという気持ちで接触して、気持ちを共有してあげてほしいのです。本人はそうでなくても頑張りますから、『頑張んなさい、頑張んなさい』と励ますだけでなく、本人が病気と闘っていることの応援団になってほしいと思います。
嘘があると必ず患者さんは悲しみ、失望するだけとなります。すぐに嘘に気づきますから、患者さんの心にとってはマイナス効果ばかりです。嘘を言っておいたほうが患者さんのためではないか、たとえば『がんであると言ったらショックを受けてしまうだろうから言わないでおこう』とは誤った憶測であったと判明してきています。善意に基づいた嘘も決して人間関係を成熟させず、阻害するだけですから、本当のことをいかに患者さんの心に軟着陸させるかを心がけ、患者さんを支援していくべきです。それは患者さんにとって大きい救いになり、助けになることです。」