「子供の持っているローラースケートボード(乗用玩具)にふざけて乗っていて、転倒した時に、左の胸のあたりにハンドルが突っかかりました。そこではじめて痛いと思い、触るとしこりが1cmくらいはっきりとありました。これは何だろうと思い、友達に聞いてみると『それは生理前後に乳腺が・・・』という話で、『気にすることないのよ』と言われて、皆さんよく知っているのだなと思いました。でも今まで自己触診しかしたことがなかったので、軽い検査のつもりで、約1ヵ月後、検査に行きました。しこりが大きく、悪性であれば乳がんではないかと思いましたが、それほど緊迫した気持ちはその時はなかったです。」
「検査のあと乳がんと診断されたのですが、大きい病院だったこともあり、入院、手術がいつになるかわからないと知らされ、そのときから(しこりのあたりが)痛くなりました。やはり、心理的なものが動いたのだと思います。それでも、『痛くないから、もしかしたら乳がんではなかったのかもしれない』などと勝手に自分で考えて、気持ちを慰めながら入院を待っていました。
実はいろいろ動揺もしたのですが、その日からインターネットなどで情報を集めて「乳がんは早期であれば治癒率が高い」とわかり、「まあ、いいや。早く切っちゃおう」と思いました。そういう性質なのだろうと思いますが、泣いたりもあまりしませんでしたし、今あるハードルを早くクリアしたい気持ちがあったので、『手術してしまえば治るのではないか』と思いました。
それでも気持ちが動転していたのか、病院からの帰り道、車で車線を反対方向に走ってしまい、走っている先から車が来て、ウィンカーも出さずにあわてて進路変更をしたりして、まかり間違えば交通事故になっていました。それからは、自分で運転して病院には行かないようにしています。」
「いちばん最初に気軽な気持ちで行った近くの大きい病院で(乳がんと)診断されて、実は手術の日まで決まっていたのですが、私が聞きたいことに対する医療スタッフの答えの曖昧さとか、その意思の疎通に若干疑問をもちました。それで主人とも相談をして、『あとは自分で決めなさい』ということで、主治医にも承諾を得て、レントゲンその他を持ち歩いて、そのあと2箇所(他の病院に)行きました。」
「やはり医師との意思の疎通であるとか、相性という点です。もちろん患者さんによっていろいろな相性があると思うのです。こういうお医者さんがいいとか、ああいうお医者さんがいいとか。私の場合、ハッキリ言ってくださる方がいいというのもひとつありましたが、(今の主治医が)いろいろな意味で、スポンジのように受け止めてくれて、割と弾力よくキャッチボールのように話を返してくれる医師でもあったので、いちばん信頼しました。
最初の面接の時に、緊張を取りほぐしてくれるような、冗談を言うわけではないのですが、そういう言葉を投げてくれたことで話しやすくなりましたので、ずいぶん楽でした。それまではいつも先生に対して緊張して、言いたいことは、私の性格なので全部言ってしまうのですが、こちらも紋切り調に『で、どうなるんですか?それで?』というような形でした。そうすると(質問を)受けた側もまたそういう口調になってしまうので、自分に責任の一端があるのでしょうが。いちばん最初に緊張をぷつっとほぐしてくれた時から、私も質問のテンションが弛緩して、リラックスしてお話ができたので、ずいぶん助けられました。」