「効果ということでは、大きく言えば陰性症状の改善。陰性症状というのが結構みなさん長く、延々と続くわけですよね。それをもう少し中身を見ると、まず再発の防止、それからもう1つが生活の質の向上。コミュニケーションが、少しでもうまくなってくれば、生活自体が広がりますよね。そういうことを目標としています。
ご家族達にとっては、思い込みでお子さんを見てしまいがちなところがありますよね。それで会話する度にトラブルが起きる。その当事者の方達が家族に希望しているトップが、『もっと私の気持ちを分かってほしい』なんですね。全家連という組織があった時に、アンケートを当事者達に取ったんですね。そしたらトップが、『もっと私の気持ち分かってほしい』、その次が『いろいろと指図しないでほしい』。それがご家族達からすると、相手の気持ちを分かるより、自分の気持ちをいかに伝えるかのほうが大事と思ってしまうんですよね。私の話し方が下手だから、薬を飲んでくれない、昼夜逆転が治せない、お医者さんに行ってくれない。家族は自分が話し下手だという気持ちを、割と強く持っているんですね。だから話し方、説得の仕方を学びたいというご家族が多いわけです。
それに反して当事者たちは、自分の気持ちが言えない。とにかく感情を出すことに不安があって、自分の話をするのにすごく勇気が必要なんですね。なので、当事者にとっては送信技能のほうにウェイトをおいて、自分の気持ちを言おうということに、SSTはかなりの場を使いますよね。
ご家族達の場合には、それをやってしまうと、お願い上手をやると、結果的に押しつけ上手になってしまう。断り上手というマニュアルで、その技術が身につくと、拒絶上手。となると、相手の当事者から、『結局は僕を意のままに動かしたいんだね』と言われてしまうというんです。そうなると、やっぱり相手の気持ちを分かった上でやるということが、まず初めにあるんじゃないかと、これは、私個人の考えなんですね。だから、ご家族には、まず相手の気持ちを分かってください、自分が今思っていることと反対のことであっても、それをまず聞いてください、そのあとから自分の気持ちを言ってください、向こうの意見をきちんと聞いてください、それで共感してあげてください。だから共感と同意は違うんですよ。
いつもの家族SSTではそんな流れで行っています。で、家庭の中が明るくなりますね。お病気の人の回復力をそれによって高めることができるというのが、一番うれしいことじゃないかなと思っています。」
全家連(ぜんかれん):1965(昭和40)年9月に精神障害者の家族によって結成された全国組織の「全国精神障害者家族会連合会」。1967(昭和42)年2月に財団法人になった。精神保健福祉に関する調査・研究、啓発活動、研修事業などに積極的に取り組んでいたが、2007年に解散した。
■当事者
■家族 |