「まず統合失調症と言っても1人1人症状が違うと思うんですけど、ものすごく今、つらいと思っていらっしゃる方もいっぱいいると思うんですね。だけどその苦しみは、ずっと続くわけではないと私は思うんですね。私も一生入院しているつもりでしたし、早く死にたかったですし、ほんとに地獄も見てきたのかなって思うんですけど、それでも、前の自分よりは今の自分が成長したのではないかって思うんですね。
どんなにつらくても症状が重くても、統合失調症の患者とか精神科の患者という前に1人の人間だと思うんですね。その人生を無駄にしないで、ちょっとずつでも生きるということを大切にしてもらいたいと思います。人間らしく、まあ苦しんだり泣いたり笑ったり怒ったり、そういう感情を自分の中で受け入れて、一生懸命生きるというふうなことを他の人にも知ってほしいし、私は自分自身にもそう言い聞かせたいと思います。」
「すごく心配をするのは、どこの家庭でもあるかと思うんですけど、私が感じるのは、あんまり過保護に『どうしたの』って言われてもつらかったし、あなたは、例えば今、火は使えないでしょうとか、危ないでしょとか、こんなことをしてはいけませんとか、ほんとに子どもに対するような態度で、私の両親も接してくるときがあるので、私ももういい年なんだから、ちゃんと一人前に見てほしい、心配しすぎないでほしいと思います。
逆にうれしいと思うのは、やっぱり家族が笑っていると、私もちょっとほっとするし、私が笑っていると、たぶん家族もほっとするんだと思うんですね。だからやっぱりつらくても、少しでも楽しく両親と一瞬でも笑えたらいいなあって思います。」
「まず、ほんとに精神科関係の専門職になろうとされる方、そういう方は、ある種の覚悟を決めてほしいと思うんですね。患者の私が言うのもなんなんですけど、閉鎖病棟って、もちろん鍵もかかる生活ですし、いろいろな制限もありますし、もちろんちょっと状態が悪くて暴れる方もいらっしゃいますし、ほんとに、甘くはないと思うんですね。
それで、例えば、実習とかで学生さんが行くと思うんですけど、そういうときに閉鎖病棟でよく実習をしてもらって、こういう状態の人が少しずつ良くなって、例えば、退院していくとか、開放病棟に移っていくというのを見ていただきたいと思います。もちろん具合が悪くて何年も病院にいらっしゃる方もいるけれども、そういう人たちを見たり、回復していく人たちを見たりして、それでも、精神疾患を持っている私たちの支援をしたいとかケアをしたいと思ってくださるならば、その方はすごく良い専門職になるのかなというふうに思います。」