統合失調症と向き合う

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近島勇さん
近島 勇さん
(ちかしま いさむ)
1945年生まれ、67歳(収録時)。会社員として働いていた35歳頃に発症。家族の希望で入院治療の体験はない。症状がうまくコントロールできないことから仕事を辞め、主夫として家族を支えてきた。作業所と出会うことで同病を有する他者と交流し、病識を得たという。現在は、ヘルパーや電話相談など様々なピア活動を行っている。妻、娘との3人暮らし(息子は結婚し独立)。
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2精神科受診の経緯
Q.精神科を受診するまでに出た兆候や症状を教えてください

「36(歳)になるちょっと手前でしたね。

受診日は、1981年4月27日が最初に精神科に行った日なんです。でも、それよりも半年位前から自分の周りが何か自分のことを噂しているとか、尾行されているとか、監視されているとか…。最初はそうだったのですけれども、それがだんだんエスカレートして声が聞こえるようになってきました。

その声も、最初は幻聴だとは気づかないのだけれども、知った人の声などが聞こえてくることがあります。すると、『その人は、今こんなところにいるわけはないし…』ということで幻聴だと分かるんですね。ところが、だんだん、今から考えると、自律神経さえもおかしくなる程に緊張の連続だったりして、手が勝手に『ピクッ』と動いてみたりとか、怖くもないのに心臓がドキドキしてみたりとか、自分の思っていること考えていることについて、幻聴が言ってくるとか…。

そういうことで、私も最初は監視カメラとかビデオカメラとかを探すのですけれども、そういうレベルではないなぁというのか。だから、むしろ人工衛星か何かは知らないけれども、そういう所からやっていて、声を聞かせる。といってもそれはコンピュータで知った人の声に似せて聞かせているとか、そんな感じだろうなと思ってね。

で、たまたまそういう時に聖書をチラリと読んだんですね。すると、いわゆる目の見えない人が目が見えるようになったり、足の動けない人が動けるようになったり、もっとになると死んだ人が生き返るとか、そういうことが出てくるんですよね。新約聖書にはね。そこで私は、ずっと推理して推理していって、実際はもぅ推理なんてものじゃなくて妄想だったんですけども。良くすることができるものがあるならば、悪くすることもできるんだと。そういう形で、人間の肉体とか感情とか思考を勝手に操るような秘密兵器があるんだ。私はそれに気づいてしまった。他の人達は気づいていない、と。

それでテレビにも新聞にも載っていないからということで、それ(その情報)を新聞社に送るという目的で、会社にコピー機があったので、夜も寝ないで原稿を書いて、会社のコピー機を使っていた時に、『近島君、何してんや?』ということで、私の病気が発覚したんです。」

Q.仕事の状況はどうだったのでしょうか

「そうですね。仕事は、だいたい月100時間を超すような労働だったんです。印刷会社に勤めていて、校正とか、版下、今だったら、みんなパソコンでやるのですけれども、昔は写真植字というものを一字切っては貼っていって、イラストなども縮小したりして貼っていってとか、そういう事をする仕事だったんです。でも、私だけ100時間労働していたわけではなくて、他の人だってそうだったから、まぁ、私だけが(病気に)なったというか…、そういう形ですね。」

Q.病院を受診したのはいつですか

「その発覚した翌日に病院に行くわけですけどね。最初は、妻が行きつけの総合病院のケースワーカーに相談して。最初、私、酒も飲んでいてね、妻はてっきり酒でおかしくなったと思って、アルコール(依存症)専門病院に(私を)連れて行ったんです。そこの先生に、『あなたはアルコール依存症ではなくて』、昔の言葉ですから、『精神分裂病です』と言われました。で、『うちでは駄目なので』ということで精神科病院を紹介されて、翌日に行った。それが最初でした。」

Q.会社からの勧めで受診したのでしょうか

「いや、そうではなくて、(会社からは)『取りあえず、(家に)帰りなさい』ということで、妻が行きつけの総合病院のケースワーカーに相談したんです。妻は、酒のことばっかり言ったみたいですね。それでアルコール(依存症)専門病院に行ったんです。ところが、私の場合は、普段は1滴も酒を飲まないんですよ。1滴も酒を飲まないのだけれども、月のうち5回か6回ぐらい飲む。そのうち2回ぐらい4合とか5合とか、飲んでしまうんですよ。深酒してしまうんですよね。

それで私自身は、パッチテストというの(検査)あるんですよね。酒が飲める体質か飲めない体質か(を調べる)。私、飲めない体質なんですよ。だから、普段は1滴も(酒を)飲まない。普段は、どちらかというとおとなしい感じでね。それが、酒が入ると酒にいどむという感じで、やっぱり深酒になっていく癖みたいなのがあって…。20歳前後の時にも3回も急性アルコール中毒で運ばれることがあってね。だから、妻はアルコールで(私が)おかしくなったんだなと思ってしまったみたいですね。」

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