統合失調症と向き合う

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近島勇さん
近島 勇さん
(ちかしま いさむ)
1945年生まれ、67歳(収録時)。会社員として働いていた35歳頃に発症。家族の希望で入院治療の体験はない。症状がうまくコントロールできないことから仕事を辞め、主夫として家族を支えてきた。作業所と出会うことで同病を有する他者と交流し、病識を得たという。現在は、ヘルパーや電話相談など様々なピア活動を行っている。妻、娘との3人暮らし(息子は結婚し独立)。
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4治療について
Q.薬を飲んだことで体調は回復しましたか

「飲んですぐは効かなかったですね。それで、(家に)帰って、妻が薬をもらってきて、朝・昼・晩、当時はセレネースドグマチールが2錠ずつ、副作用止めのアキネトンが1錠。朝・昼・晩と飲んだんです。先生(は)入院するように勧めたのだけれども、妻は『入院は、嫌です』ということで、自宅療養になったんですね。

自宅療養をして、最初6週間ですけども、朝・昼・晩(薬を)飲みますね。すると、この辺のこめかみが、もぅ絞めつけられるようになって、そして、ヨダレが垂れるし、呂律(ろれつ)が回らないというか、そんな感じでした。それで、寝ていても寝ているという同じ動作ができなくて、寝ていたと思ったら起きたくなって、起きたと思ったらまた寝たくなるというのか、そういう副作用は出ましたけれど。副作用といっても、当時、私は分からなかったのですけれど。

ただ、そういうしんどさはあったのだけれども、なんていうか、機関銃の乱射のように、朝目覚めてから、寝ている間は気づかないのですけれど、寝るまでの間、ずっと聞こえているいろんな幻聴ね、若い人、年とった人、知った人、知らない人のいろんな声が『バァー』と機関銃の乱射みたいに聞こえている。しかも波状攻撃的に『バァー』と聞いて、言いあいこして『参った』とかふぶいてね、去って行ったと思ったらまた来て、同じようなことを言ってくるというのかな。『ああ、向こうは心理学者まで揃えているのかな』と思うぐらい、自分の弱点だとか気になっている事とかいろんな事を言ってくるというか…。

だから、巨大な秘密結社があるんだなぁと思って、私は追おうとしていたんですね。そしたら、薬を飲み出すと、その機関銃の乱射のような幻聴が雨だれの音ぐらいの速度に『ポツンポツン』という形になったんです。それで、夜も、ほとんど寝ないで幻聴とやりあっていたのだけれども、薬のおかげというか、それで夜も寝られるようになって、休養も取れるようになって…。そういう形になると、ちょっと穏やかになってくるんですよね。敵の気配もね。声だけではなく気配とかもしますから、気配も穏やかになってきて…。

そこで、私は病気であって、病気だから薬を飲んで効いているとは思わなかったんですよ。何か辻褄を合わせるために、敵は、(私が)この薬を飲んでいると攻撃の手を緩めるんだろう、緩めてくれるんだろうとそのように思っていたんです。敵が、やっぱりいてね。それが、私の妄想であって…。で、妻が、『薬を飲みなさい』と出してくれるので飲んでいたというか。だから、薬も、(症状が)ひどい時は自分で飲めないんですよ。どれが2錠でどれが1錠かが自分でもこんがらがって分からなくて。妻が、ちゃんと2錠2錠1錠出してくれて、『これを飲みなさい』という感じでね。(期間は)えっと、6週間。」

セレネース(ハロペリドール):定型抗精神病薬
ドグマチール(スルピリド):抗精神病薬
アキネトン(ビペリデン塩酸塩):抗パーキンソン薬

Q.通院はどのぐらいの間隔で?

「最初のうちは(職場は)月のうち2回土曜日が休みだったんです。それで、最初は2回土曜日に行っていたんです、病院にね。でも(トータルで)3年行っているか行っていないか、なんですよ。というのは、家から遠かったんです。それで職場の近くの総合病院に神経科(精神科)もあるというので、神経科(精神科)のある所に移ったんです。(病院は)それだけです。」

Q.病院を変わったことで薬も変わりましたか

「同じ薬でした。ただ私のほうで、薬はもらうのですけれども、いわゆる先生の言うとおりに薬を飲んでいると、自分でも仕事がとろいなぁって分かるんですよね。頭もどっちかというと『ボーッ』としている。だから勝手に薬の量を減らしたり、中断したり…。何か月くらいかはもったみたいですね、中断してもね。

ところが、やっぱりひどくなって、幻聴が『バァー』となってきて、幻聴だけじゃなくて、気配だとか音だとか、いろんなものがありますから。今から考えるとね、本当に神経がすり減る所まですり減っているというか。そういう時に “思考奪取(しこうだっしゅ)”、考える力がまったく奪われてしまうということ(になる)。」

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