統合失調症と向き合う

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ペトロさん
ペトロさん
1967年生まれ、46歳(収録時)。29歳の頃に幻聴と妄想が始まったが、自分では現実のものと信じ、さまざまな機関にその内容を訴えたが解決せず、自分の聞いているものが現実であることを証明しようと精神科を受診し、統合失調症と診断される。営業マンとして働いていたが、会社を辞め、ボランティアをはじめさまざまなことを行った。2年前に住まい近くの障害者就労支援センターの存在を知り、支援を受けながら就職活動を行い、現在は老人ホームの調理場で調理師として週5日働いている。
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2精神科受診前に行ったこと
Q.精神科を受診する前に現れた症状をお教えください

「1996年ですから、29歳の時です。兆候のようなものは何にもなくて、突然、幻聴と妄想が始まりました。

部屋の壁から声が聞こえてきて、『俺達はやくざだ、部屋を出て行かないとぶっ殺すぞ』と聞こえました。僕はとても驚いて、部屋の壁を一所懸命にスピーカーがないかと探しました。でも、その声は、いろいろと意味不明のことを深く語ってきて、またくだらない冗談のようなことも言いました。

そのうちその声は、スピーカーから聞こえているのではなくて、耳に直接感じる声だと分かりました。この声は何か僕を脅迫して、僕の心を操ろうとしているような感じがしましたので、僕は、『これは日本のやくざの新しいやり方で、オカルトか超音波のようなものを使っているのではないか』と思いました。

僕の性格上、混乱して恐怖に怯えるということはなかったのですが、自分に起きていることを冷静に分析しようとして、とても張り詰めた緊張感に見舞われてしまいました。実際に声がはっきりと聞こえますから、幻聴などとは思いませんでした。この声は最初1人の男の声でしたけれども、そのうちに複数の、別の人の声が混じるようになって、複数の人間が関わっているように感じました。

それと同時期に、僕の周囲で待ち伏せしている人間がいるように感じることが始まりました。僕が道を歩いていると、僕の行動を待ち伏せしているかのように、バッグとか服とか車の色とかナンバープレートなどで、脅迫的なサインを示して、僕に暗示をかけようとしている人々がいるように感じたのです。ですから、それらの人々は、何かの組織に操られていて、僕を脅迫するために誘導されているように感じました。

僕はクリスチャンですけれども、教会の中にもそういう人達が侵入しているような感じがしてしまいました。そして、日本社会全体が、何かの組織に操られているように感じたのです。これらの体験は毎日続きましたから、僕にとっては本当に現実的なことであって、妄想だとか幻聴などというふうには考えられませんでした。だから、病院に行くことは、考えられないことでした。」

Q.ご家族の反応は?

「家族はもう驚いてしまいまして、病院行きを非常に強く勧めたのですけれども、僕は、自分の体験をどうやったら真実だと証明できるかということを、むしろ考えていました。

それで、警視庁へ行ったり、法務局の人権委員会、国の機関ですけれども、へ行ったり、人権問題だと思ったので、国際人権団体のアムネスティへ行ってみたり…。あと僕はクリスチャンなので、バチカンの大使館へちょっと相談に行ったり、日本の高位聖職者と言われる司教さんとか、外国人の宣教師の神父さん達に相談したりしてみました。

そして、国内ではちょっと身の危険があるかもしれないと思ったので、海外の友人達に、『日本国内がおかしいかもしれない』ということで、手紙を書いたりしました。

警察の場合は、私達にはそのようなやくざが、そういう行動をしているという情報はない。そして、そういうことはまったくあり得ないことなんだけれど(と)。『じゃ、やくざが何(を)やっているか教えてくれませんか』と言ったら、いや、それは一般市民に教えられることではないと言って…。最初は地元の警察に行ったんですよ。だけど、ひょっとすると地元の警察もグルかもしれないなと思って、警視庁に行ったのです。

その頃は、『おかしいおかしい』と思っていたので、これは病気とは思えない、とにかく行動してみようと思って、いろいろやったのです。」

Q.海外の友人の反応はどうでしたか

「(海外の友人は)日本のやくざというものに対してやはりある程度、みんなイタリアのマフィアとか、シンジケートとかいろいろあるじゃないですか、そういう背後にあるものが、(僕の)周りに動いているのかもしれないみたいなイメージは持ったのですけれども。

でも、僕の書いていることがたぶんおかしいと思ったのでしょうね。『あなた(は)今、大丈夫か? 精神的に落ち着いたほうがいい』というような返事をくれましたね。」

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