「このままでは行き詰ってしまうなあというふうに感じていた時に、家族のほうから、精神障害者を応援してくれる『ウイングルWingle』という就労支援センターが、僕の住んでいる地域にできていて、とても話題になっているから、通ってみたらどうだいと言われたのです。NHKのニュースなどでも紹介されたりしたらしくて、家族が知っていたんですね。
僕は、自分で個人的に仕事を探そうとして、ハローワークに通ったりしていたのですけども、やっぱり病気をオープンにして雇用してくれる企業というのは、まずないだろうと感じていて、ほとんど諦めていました。個人的な努力で探すことについては。で、病気を隠して仕事をしようとすれば、100%あるいは120%の仕事量を要求されて、症状が悪化してしまうのではないかということが懸念されましたので、それもできなかったです。
ですから、そういう時でしたので、ちょっと迷いはあったのですが、その就労支援センターへの通所を申し込んで、通うことになりました。週5回、週5日、センターに通って、パソコン業務の訓練をしたりして、業務のスキルを磨いていました。で、週5日通所することによって、自己管理の力を高めて、実際就労した時のセルフコントロールの力も身につけることができるようにするのも目的なんですね。
また就職活動のために必要なスキルがいろいろありますけれども、講座も、毎週いろいろ開かれて、モチベーションを非常に高めて、全体の雰囲気を盛り上げて、就職活動をすることができました。
ウイングルのスタッフは、就職する(させる)ことが目的で、それが使命なわけですね。それを市から委託されているわけですから。ですからとっても熱心に、協力的にサポートしてくれました。
僕のような40代の人間にとっては、就職活動のノウハウを勉強するというのは、ちょっと気恥ずかしい部分もあったのですけれども、最新の採用動向とか、企業のニーズとかを勉強することができて、とても良かったと思っています。」
「就職活動は、最初は、都心でのパソコン業務の事務職を探しました。もちろん障害者の雇用の求人ですけども。事務職のほうが、体が楽だろうと考えていましたし、パソコンのスキルはWINDOWS 98の頃から、それなりに身につけていたので、自信がありました。
ただ、これと思う障害者雇用の求人には、応募者も多いわけです。これはもう健常者と一緒ですね。ですから、なかなか採用にいたりませんでした。いわゆる障害者合同面接会などが開催されたら、それにも行ったりしたのですけれども。3次面接ぐらいまで行った企業もあったのですが、合格採用はありませんでした。
それで、いろいろ考えて、僕は40代の男性であって、事務職のキャリアがあるわけでもありません。応募者の多い求人の中では、たとえ障害者雇用であったとしても、採用される可能性は少ないのではないかなと判断しました。そこで、事務職以外で、障害者雇用も探してみようと考えました。そして、視野を広げて、視点を変えて、自分の住んでいる居住地域で求人を探すことができるようにもなってきました。
どのような可能性があるかと、いろいろ検討したのですけれども、僕が持っている資格の一つに調理師免許がありました。調理の仕事をずっとやってきたわけではないのですけれども、若い時に資格を取得していたのです。そこで、地域の施設給食の調理場、老人ホームとか病院とか、そういう所で求人がないかと思って探しました。そういう所なら雇ってくれるのではないかというイメージがあったんですね。そして、ハローワークで、大手の施設給食の運営企業が老人ホームでの調理場の求人を、募集していたのを見つけたんですね。」
「まず自分で探すのが基本なのです。自分が努力するということがあって、それを全力でサポートしてくれるというか…。
僕の住んでいる市の場合は、ウイングルがハローワークの近くにあるんですよ。同じ町の同じエリアの中に。ですからウイングルに通ったあと、ハローワークへ行って求人を探してきたり、障害者雇用の窓口に行って求人を探したり、スタッフも一緒に同行してくれたり。また、ウイングルのほうにも障害者雇用の求人がきますので、それが貼り出されたり、人によっては紹介してもらったり…、いろいろですね。」
「ウイングルのスタッフが同行してくれて、障害者雇用として受け入れてもらえないかという話を一緒にしてくれたわけです。障害者雇用とは表向きは出ていないのですけれども、求人が出ている企業へ出向いて、障害者雇用枠はどうですか、いろいろメリットがありますよと。『法定雇用率は達成していますか?』というようなアプローチで営業してくれるわけです。売り込んでくれるわけですよね、障害者を。それで、マッチすれば就職にいたると。
僕の場合もそういうやり方で交渉してくれたわけです、一緒に。そうすると、企業側からは、『人手も不足していて、障害者の雇用率も今、下がってきているので、ぜひ来てくれ。採用したい』という返事があったのです。」