統合失調症と向き合う

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ペトロさん
ペトロさん
1967年生まれ、46歳(収録時)。29歳の頃に幻聴と妄想が始まったが、自分では現実のものと信じ、さまざまな機関にその内容を訴えたが解決せず、自分の聞いているものが現実であることを証明しようと精神科を受診し、統合失調症と診断される。営業マンとして働いていたが、会社を辞め、ボランティアをはじめさまざまなことを行った。2年前に住まい近くの障害者就労支援センターの存在を知り、支援を受けながら就職活動を行い、現在は老人ホームの調理場で調理師として週5日働いている。
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12現在の仕事
Q.現在の仕事はいかがですか

「すぐに地域の老人ホームの調理場で働くことになりました。地域の森と林の中にある静かな修道院みたいな感じの素敵な老人ホームです。

僕は、若い時に調理場での仕事はいくらか体験していましたので、なんて言うか、独特の上下関係、あるいは心配りとか調理場での仕事の作法というものは、ある程度、体験的に理解していたつもりでした。で、調理場の雰囲気は何かとっても懐かしい感じがして、ある意味では、心が若返った感じがしました。

そして、栄養士さんとベテランの調理師さん達と、パートのご婦人方もいるのですけども、とっても快く受け入れていただいて、仕事もちゃんと教えていただくことができました。で、職場の同僚の方々はですね、僕が障害を持っていることに対してとても配慮してくれて、気を遣ってくださって、勤務も極端に無理のないように、シフトなどでも配慮してくれました。残業もいくらかしていますけれども、精神的・肉体的にはそんなに過度な負担にはならないので、職場に貢献ができて、自分自身も経済的に助かるということで引き受けています。

2年近く経ちましたけれども、現在も調理員の1人として、朝昼晩と3交替のシフトの中で、ご老人達のために料理を作っています。仕事は厳しいですし、チームワークがとっても要求されて、体力的にも、ある程度の忍耐が求められるのですけれども、職場の人間関係は悪くないですし、ある意味では、とても健康的に仕事をしていると思います。

毎日のまかない、自分達の食事ですよね、まかないで、ご老人達に出した食事がそのまま大盛りで出るのですけども、それをおいしく食べて、調理の仕事を続けています。私の老人ホームの職場は、自宅から車で15分ぐらいです。ですから、仕事が終わってすぐに帰宅できる状況ですので、それも、家には年老いた母もいますし、とても良かったと思っています。」

Q.精神障害者が就労できるために重要だと思うことは?

「これはまったく僕の体験的なことからの判断ですけれども。人によって言われることは違うと思いますが、まず、自分1人でもがいて悩んで諦めないで、それぞれの地域にある障害者を支援する就労支援センターというような施設の支援を受けて、協力してもらって探すことが、とても大事ではないかと思います。

精神障害者が自分1人で仕事を探すということはとても困難なことではないかなと思いますね。精神的にも疲れますし、まず企業側が、(精神障害者が)1人で行くと、あんまり信用してくれません。企業も非常にリスクを感じるわけですね。ですから、就労支援センターのサポートがあると、企業はある程度、そのサポートによってリスクの回避を見込めますし、安心するわけです。

そして、やりたいこととできることをしっかり分けて考えることも大事ではないかと思います。就職活動は、健常者でもそうであると思うのですけれども、やっぱり、とても現実的な選択を続けていくことだと思うのですね。自分の願望だけで夢を見て、その中を彷徨って、結局、徒労に終わって、就職を諦めてがっかりしてしまうということもありがちではないかと思うのですけれども。

障害者の自分、あるいは、今までの自分の人生の中で培ってきたことの中でできることは何か。そういうことを、冷静になって分析することが大事だと思います。そして、自分の置かれた状況と、社会の障害者に対するニーズを受け入れて、整理して考える必要があるのではないかなあと思います。」

Q.障害者が仕事を続けるために大切なことは何だと思いますか

「仕事を続けるために…。少なくとも(僕が)今の職場で大事にしているのは、職場の雰囲気にもよるとは思うのですけれども、特に調理場という特殊性もあるとは思うのですが、割と家族的なのですよね。みんな、同じ地域から通って来ている人達ですから、地域の話題もいろいろ出ますし、なるたけ僕としては家族みたいに思ってもらえるように、心を開いて…。

病気のことについても、なるべく相手が恐怖心を感じないように、しっかり自己管理をしているということを分かってもらえるように、例えば、夜はちゃんと寝ていますとか、疲れすぎてはいませんとか、薬を飲んでいれば症状は安定していますとか、説明することですね。ちゃんとね。

というのは、身体障害者の方と違って精神障害の人間が職場に入ってくると、ちょっとなんだか分からないと思うのですよ、どう扱っていいか。実際に、栄養士さんも、『どうしたらいいんですか。彼は大丈夫と言っているけど本当に大丈夫なんですか?』と、かなりウイングルの人などに訊いたらしいんですよ。そして、ウイングルの人も、就職してから半年間はサポートしてくれます。半年間いろいろと通ってくれて、(職場を)見に来てくれて、いろいろ説明してくれたりとかしたんですね。そういう中で、理解してもらったというか…。

だから、仕事が見つかったので黙っておとなしくしていれば続けられるかもしれないと思うのではなくて、自分の状況や努力していることなどをちゃんと説明して、職場に分かってもらうということも大事だと思うのですね。

あとは、やっぱり自己管理ですね。体調を崩さないようにする。もう絶対それです。とにかく仕事を休まれるということが一番困りますから。それは健常者でもそうでしょうけれど…。仕事を休んでしまうと、『やっぱり障害者はダメだ』と。もちろん具合が悪くなったら休んでいいよとは言ってくれます。けれども、『仕事中に具合が悪くなって、こんなに休まれちゃうんじゃちょっと無理だよ』と。特に肉体労働の仕事場ですから、自分の体調は自己責任として管理する。それで悪くなってしまったらしょうがないですけど。」

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