「私は、信心をしているのですけれども、いくら信心に身を入れても、ちっとも良くならない時期がありまして、『神様なんていないの?』とか、『こんなに信じているのにどうして?』というふうになって、ついにはいじけて世間を恨んだり親に当り散らしたりということはあったのですけども。
カウンセリングに行った時に、人間の精神を構成するものは、仮に、“魂と心”というのがありまして、荷車で言えばそれはちょうど両方の車輪みたいなものなのです。ですから、仮に魂に効くのは信心とか道徳とかモラルなのですけども、精神病というのは、もう片方の車輪である心のほうが病んでいるのです。ですから、心に効くのは、やはり精神医学なものですから、最終的には、そのカウンセリングの先生が言っていましたように、精神病を治すには、1つには、最良の医学と言われました。2番目に大事なのは信頼できる医師。で、3番目に大事なのが、周囲の理解や協力、その3つが全部揃わないとだめなのです。それで心は治って、魂やそれを道徳的にして、両方が健全になったことで、人間の精神は健全になるのだということを教わりました。ですから、そういう面で、その理論は正しいのだとしたら、一般の人達は、勘違いしないで正しい治療を受けたほうがいいかと思います。」
「ちょっとマザコンかなあなんて思うのですけど、でも、戦国武将でもお母さんというのは大事な相談相手ですから。ほんとはそれに父親がもうちょっと相談に乗ってくれたらいいなあと思うのですよね。父親は、まだまだ協力が、はっきり言って足らないと思うのですけど、まだ以前に比べて温かい目で見守ってくれるので、できれば、まあ、酒でも飲みながら人生を語りあいたいなあというのが正直な気持ちです。
(お酒は)だめです。でもやっぱり飲みたくなるので、たまには羽目を外して飲みますけど、やっぱりそのあとは怖いので、ほどほどにしています。」
「ざっくばらんに言って、ちょっと当事者の気持ちに鈍感すぎるのではないかなあと思いますね。例えば拒薬するにしても、理由があるから拒薬するのだから、それを刑務所の刑務官みたいな態度で、強制的に紋切り型に飲ませて、『はい、さようなら』というのはないんじゃないかなあとは思うのですけども。
インフォームド・コンセントをしっかりしていただきたいですし、強い薬を飲ませておとなしくさせてしまったほうが、管理するのは楽なのでしょうけども、そうすると本人の主体性が薬で蝕(むしば)まれていきます。それは、結局は、病院のためにも本人のためにも良くないですし、社会的入院は減っていかないと思うのです。ですから、そういうところをよくお考えになって、僕達の考えをもうちょっと聞き取って、お薬を適切に配合してくれれば、患者さん達は劇的に良くなると僕は信じています。」