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このとき、がんをきちんと取るために安全域を設けます。一般的には、上部直腸にがんがある場合は肛門側に3cm以上安全域をとって、肛門周辺の腸間膜を少し広めに取ってきます。下部直腸にがんがある場合は肛門側に2cm以上(肛門近くになるため3cm取ることは難しい)安全域をとり、肛門周辺の腸間膜をほぼ全部取ってきます。
がんから肛門側に約2cmの安全域をとって直腸を切除しても、十分に肛門と腸をつなぐことができれば、肛門を残す手術ができるということになります。いずれも『括約筋温存手術』と言い、腸管の吻合線が腹膜翻転部(腹膜の骨盤でのいちばん奥の部分)より下にあるものを低位前方切除、上にあるものを前方切除と言います。」
「肛門が残っても、健康なときと排便の状態が同じかというと、まったく同じではありません。実際に括約筋は残っているので肛門は問題なくしまります。しかし、直腸は便をためておくタンクみたいなもので、そのタンクを切除してひとつの管になってしまうので、便を十分にためておくことができず、何回かに分けて便が出るようになります。」
「便をためる機能は、つないだ腸がだんだんその働きを担うようになってきます。たとえば肛門の近くでつないだ方の場合、術後1年以内は非常に便の回数が多かったり、ときどき失敗して便を漏らしたりということがありますが、だいたい1年経つと慣れて、自分の排便をうまく調整できるようになってきます。」
「便意は一般的には残りますが、肛門の近くでつなぐ手術をした方は、“便をしたい”という感じが少しわかりにくくなることがあります。ただ、一般的には便がたまると腸の動きが出てきますので、押し出されるような、お腹が張るような感じ、むずむずするような感覚は残ります。」