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② 直腸がんの手術
●手術後の生活について

「直腸がんの手術で肛門を残した方、人工肛門になった方は、いずれも結腸がんと違って、手術後の生活、特に排便に関する影響が少なからずあります。ですから、手術後どのように生活していったらよいかというところで非常に悩む部分があると思います。

肛門を残した方も、実際には排便が1日1回では済まない可能性があります。『出かけたらトイレに行きたくなってしまうかもしれない』、場合によっては『漏らしてしまうかもしれない』という不安がつきまといます。でも実際には、排便の状態が不規則でも1年後にはだいたい一定してきます。いろいろなパターンがあり、毎日2〜3回出る方、1日5〜6回出るけれどその後2〜3日出ない方、便秘と頻便を繰り返す方などがいらっしゃいます。自分なりに排便のコツを覚えながらそうした不規則な状態に少しずつ慣れていくことが大事です。

トイレが不安だからといって外に出かけないでいると、いつまでたっても『外に出て行けない』『普通の日常生活が送れない』ということになります。ですからトイレがどこにあるかを覚えて、いろんなことにトライしていっていただけると、だんだんと体が慣れてくるのですね。

排便は精神的な要素と非常に関連していて、『不安があるとすぐ下痢になる』などいろんな人がいます。直腸の手術を受けた方も、最初はやはり『排便のほうもこんなふうでどうしよう』と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかしトイレの場所がちゃんとわかっていれば『何かあったらすぐに行ける』、あるいは『最初は漏れるかもしれないからパッドを当てる』という工夫をしながら、自分の日常生活に排便をうまく取り入れていくのですね。

精神的なところで非常に大きく影響を受けますから、たとえば『一定時間トイレには行けない』という緊張感がある状態になると、それだけでトイレに行かないですむことはいくらでもあるのです。そういうことを少しずつ繰り返していきながら、またうまく便秘や下痢を抑える薬を使いながら、生活の中に排便の習慣をうまく取り入れることができるようになってきます。つまり、自分で排便の状態をコントロールすることで、確かに1回で排便はすまないにしても、日常生活は普通に送れるような状態になります。

手術直後にいきなりよくなることは難しいかもしれませんが、成功と失敗を繰り返していきながら、『どこかに遊びに行こう』と思って行ったら『大丈夫だった」ということが起きてくれば、「今度はこういうことをしてみよう」と、いろいろなことができるようになってきます。

自らやってみることによって、排便をうまく調整できるようになる。そうすれば、仕事もできるし旅行にも行けるとなるわけです。そういうふうに調整していくのが、術後の排便の調整のコツになると思います。」