「手術後の後遺症は、実は大腸がんでは比較的少ないのです。たとえば胃の手術だと食事を摂るのに少し工夫がいりますが、大腸がんの手術後は、食べるほうは全然問題がなく、どちらかと言うと排便に関する後遺症が大きいと思います。
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また下部直腸がんの手術では、排尿機能と性機能(特に男性)が大きな問題になってきます。性機能をつかさどる自律神経が直腸のすぐ近くにあるため、その自律神経が手術によってなんらかの影響を受けると、排尿機能障害あるいは性機能障害が起きます。ですから下部直腸がんの手術では排便、排尿、性機能の3つについて、全部考えていかないといけません。肛門に近い直腸がんの手術を受けたあとは、この点について十分認識しないといけないし、慣れてもらわないといけません。」
「特に排便機能障害は大きな問題になりますが、日常生活の中で排便習慣をうまく取り入れていくことが大事です。人間の体は少しずつ学習する能力をもっていますから、最初は手術が終わって手術前と大きな違いがある環境になっていても、その環境に順応してくれる力を誰もがもっています。
ですから単に不安だということではなくて、『今までどおりの生活ができるだけできるように』という気持ちで生活をしていると、自然と後遺症も軽減してくると思います。特に排便について、直腸がんの手術をした方では大きな障害になる可能性がありますが、現在の状態をうまく受け入れながら時間がたってくると、半年後、1年後と体の状態が回復するとともに、症状も軽減してきます。仮に後遺症が少し残ったとしても、それをうまく切り抜けていくことができるようになっていくと思いますので、十分にそういう点を考慮しながら日常生活を送っていっていただいたらよろしいと思います。」