3乳房同時再建をその日に決意
「当時、乳房の温存手術がそれほどブームではなかったということもあるかもしれませんが、がんの場所や大きさの関係から『乳房全摘がいちばん望ましい』というようなことを主治医に言われました。乳房を全摘するということは私の中にはなかったので、それ自体ショックでした。がんと言われたこともショックでしたが、『乳房を全摘しないとちょっとマズイかな』と言われたときもすごくショックで、片方の乳房がない姿をしたまま自分が生きていくことに恐怖すら覚えたという感じです。それで、ドクターが『若尾さん、僕だったら乳房全摘を勧めるよ』と言ったときに一瞬真っ白になったのだけど、『じゃあ、同時再建できませんか』とその場で乳腺外科の先生にお願いしました。先生が『えっ、僕はできないよ。僕は乳腺外科だから』と言ったのですが、先生もいろいろその場で手配をしてくれて、おおむね手術の予定が立つような段取りをその日のうちにしてくれたのです。
それが私の乳がんの告知を受けた当日だったのですが、その日のことは、本当に今でも忘れられない。怖さと、自分がそこまで決めちゃった潔さといったらおかしいかもしれないけど。テキパキと、と言っても決してオーバーではないような感じで、その日のうちに決めちゃったということです。無謀だったのかもしれないけど、これでよかったのかなと今は納得しているので、いいのですが。そういう自分の心情も含めて、ショックも受けたけど高揚もしていたというか、戦闘体制だったというか。身体中アドレナリンだらけで、『負けてなるものか』という気持ちももしかしたらあったのかもしれないけど、半分『この世の終わりだ』とも思っていて、そのときは何かそういった状況で自分の進むべき道を決めた日だということをよく覚えています。」