「はじめての出勤日に上司に、『面接のときに月に1日か2日休むって言いましたでしょ。あれなぜかと言うと、私がんなのです。がんの治療を今まだしているので、通院のために休まなくてはいけないのです』という話をしました。
何か隠しながら働き続けるのも逆にそのほうが自分にとっては精神的なプレッシャーになるかもしれないし、前の会社をそういう理由で退職したという、何か悔しさみたいなものもあったので、もうこれは言おうという気持ちもあり、普通に言いました。
今度の職場はわりと高齢の人が多く、皆も何か持病を抱えていたのですよね。それで『病気はお互いさまだから』と言われたのです。『僕も肝臓悪いし、起きられないときがあって、そういうときは休む』と。『君はたまたまがんで、それを通院で休むというだけで、いいじゃないか』と言われたのです。そのときに『あ・・・職場によって、こんなに差があるんだ』と痛感したのです。前の職場でもそういうような感覚があれば、普通に勤めきれたのかなと思ったのですが、なかなかそこは難しいところだなと思いました。
それでいちばん上の上司には言って、そのあとはわりと同僚の人たちに徐々に、『実は私こういう病気をしていたのですよ。前の会社はそれで辞めたのです』という説明をひとりひとりにしていきました。そしてもう皆がわかり、『今日お休みします』とか『明日検査なので休みます』と言うと皆、『うん、うん。ゆっくりゆっくり。そんなに慌てて来ないで大丈夫だからね』というような感じで送り出してくれて、働く環境としてはすごくよかったです。」
「前の会社は自分たちで(会議の日程を)決めるというよりは、最大公約数で決まるぐらいの大きな会議だったのですけど、今度の会社は、この日にしようというのがわりと自分で決められたのです。自分でスケジュールを見ながら意見が言えたのです。『こことここに外来が入ってくるから、会議はこの間でならできるな、資料作れるな。この日がいいです。会議室も空いています。この日にしましょう』と言うと、皆もわりと『じゃ、その日にしよう』と結構あっさり決まっていったのです。工程管理と通院管理が全部自分のスケジュールのなかでできたので、すごくよかったです。」
「節目節目の検査とか、造影剤を打ったあとに会社に行っているときとか、やはり気分が悪くなったりします。『検査で造影剤を打って、気持ち悪い・・・』と言うと、『帰りな!いいから帰りな』と言われるのです。そういうことを言ってくれる人がいたから、『じゃ、帰ります』と無理をしないで済むのですよね。そこはすごくよかったですね。」
「ただ、やはり有給休暇ですよね。最初10日間ぐらいからスタートしたので、それもあっという間に無くなりました。
通院は、自分だって行かなくて済むのであれば行きたくないのですけど、行かざるをえないですし、そういうものなので、それはやはり別に考えていってほしいと思いました。それとがんの治療はひとつの科だけでは済まず、たとえば放射線も受けることになれば、放射線科にも行かなくてはいけなかったり、それがまた別の病院だとしたら病院をはしごしなくてはいけないのです。そこがやはり現実問題として、治療を続けながら働くにはとても難しい部分、物理的にも難しい部分だというのをすごく痛感しています。」