「自分が『がんです』と職場や社会で言ったときのメリットとデメリットを比較すると、今はデメリットのほうが大きいから皆言えないのだと思うのです。たとえば部署が変わってしまったり・・・ということです。この状況はたぶん海外でも、20年ぐらい前までは普通にあったと思うのです。
この“LIVE STRONG”という腕輪はLANCE ARMSTRONGというところが出しているもので、“強く生きろ”というもの(がん患者へのメッセージ)です。米国もやはり患者さんは今の日本と同じような状態の中から、『(がんだからと言って)社会的な死ではいけないんだ、社会的に生きているがん患者になろう』という運動を患者さん自らが始めていったわけです。今では向こうでは、『私はがんです』と言うと、『Congratulations! 』とか、『Great! 』と迎え入れられるのですね。
昨年、米国のある病院を見に行く機会があったのですが、そのときに『We are the hero of our own story. 』というポスターが病室に貼ってありました。あちこちにあるのです。日記帳まで売っていて、すごく感動しました。『患者さんの体験には価値がある』、『人生の主役はあなたなのです』ということを、病院のなかで目にできるというのは、啓発材料としてもすごくすばらしいと思いました。
向こうもそれは1、2年でできたことではないので、日本でも患者さんがまず言っていく、自分の夢を語っていく、自分のやりたいことを言っていく。『自分はがんを体験したけれども、それはマイナスではなくて、そのことで自分は気づいたことがあるんだ』ということをプレゼンテーションしてそれで就職できたら、すごくハッピーなことだと思うのです。それは日本ではこれから始めていく活動ですし、患者さんたちひとりひとりが自分を変えていくことは簡単だと思うので、これからは皆さんがそれをできていけるようになったらいいなと思っています。」