「がん患者さんの体験はものすごい価値だし、その人がたとえば15年、20年と働いてきた社会的なスキルというのは、それは対価払って当然なことなのですよね、即戦力なので。それは非営利ではなくて、株式営利追求だろうと思ったのですよ。そうしないと、ただの安い人材になってしまう。それはおかしいですよね。それは私が考えているものとは違うので、そうではなくて、きちんと対価が支払われるという状態にもっていくのがやりたいことと考えると、(作るべきはNPOではなく)株式会社だと思いました。
やはりその体験してきたことにものすごく価値があると思う。それはお金になるし、しなくてはいけないと思うので。そういうところから、ひとつひとつ、人の考え方も変わっていくのかなと思います。
がん患者さんは“死んじゃう”というイメージがありますが、そうではなくて逆に命の限りを見たから、生きていることにすごく一生懸命で、新しく生まれ変わったぐらいの高いモチベーションをもっているのですね。そこを見てほしい。病気を見るのではなくて、スキルを見てほしい。そういうことを社会発信していくには、非常に面白いビジネスモデルになると思っています。」
「まず、がん体験者の就労場所を作っていきたいということで、これは企業と協業で組んでいけたらいいなと思っています。それから、学会の運営の企画をしたいというのがあります。自分がそういう場所に行ったときに、何か上から目線だったりして、患者の声があまり入っていないのですね。患者さんは常に研究対象にあるのですが、それだけではないのではないかと思っていて、いつかはその患者さんが『私たちはこういうことをやりたい、こういう問題があるんだ』ということをいろいろな場で議論できるように、学会のプランニングも考えていきたいと思っています。あとは、復職のプログラムが今ないので、がん体験者の復職をどうしたらいいかという部分を(両者に)コンサルティングしていきたい。その3つを3本柱でやっていこうと思っています。」
「全がん罹患者の4人に1人は働き世代なのです。就業規則にがん患者を守るセーフティネットがなかったと自分ががんになってすごく思いました。一般の企業においても、そういう人たちを辞めさせてしまうのは簡単ですが、それはすごく人材流出だし損失なのではないかと思いました。物理的に行けなくなるのは本当に治療をしている間だけで、それが終わればまたかなり元に近いレベルまで戻れるので、そこの部分のコンサルタントがないなと思ったのです。復職プログラムが自分もなかったので、自分で工夫していくしかなかったのですけど、何かそういうアドバイザリーボード(委員会)みたいなところと人事が組んでもらっていれば、すごく普通に戻れたのではないかと思うのです。そういう部分を企業側に全部押し付けてしまうのはたいへんなので、体験者の人たちがサポートして、それがまた就労の支援につながっていけばすごくいいなと思っています。」