がんと向き合う

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花井美紀 さん
(はない・みき)
父親の直腸がん闘病をきっかけに患者会の「ミーネット」を主催する。名古屋市と協働で名古屋市がん相談情報サロン「ピアネット」も運営している。会員は名古屋市内外から550〜600名。がんのピアサポーター養成講座を開催するなど、がん体験者だからこそできる支援の在り方を模索し、実践している。
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5患者サポート活動①
●院内ピアサポート

「今、愛知県内のがん診療連携拠点病院11施設で、ピアサポーターがチームを組んで、病院の中でピアサポートをするという活動をしています。

それから、その(活動の)中で、病院でこういうがんセミナーがあるとか、病院にしか送られてこない情報がありますね、国立がんセンター(国立がん研究センターがん情報センター)の情報であったり、行政のイベントであったり、そういう情報にも触れることができるので、それをご紹介する。そうしているうちに、このネットワークの広がりから、他の団体で主催する催事とか、行政のがん関連のイベントとか、いろんな情報を送っていただけるようになりました。そうしたものを会員の方にお知らせするということでも1つつながっています。それから、ミーネットに入会するといろいろながんのセミナーや講演会などの情報が得られるから助かるというお声もよく聞きます。」

●院内ピアサポートのシステム

「乳がんのピアサポーターが、乳がんの患者さんだけの相談を受けられるのが理想かもしれないのですが、そういう具合にうまくいかないのですね。病院というのはいろんな患者さんが行き来している場所で、乳がんの患者さんが乳がんのサポーターと相談したいと思っても、乳がんのサポーターがいない時もあります。非常に希少ながんで10万人に1人とか2人のがんの人がいるとしますね。今まで、自分と同じがんの人に会ったことがないというような人がいます。それがたまたま診察を受けた日に、病院のロビーで、同じがんのピアサポーターに出くわすこともあります。

ところが多くの場合は、自分のがん種のピアサポーターとマッチングできるかといったら、そういう場合だけではないのです。けれどもピアサポーターとして、総合的にスキルを積んでいく上には、自分のがん種だけに限っていては、1か月4回活動しても、1回も(同じ)がん種の人にめぐり会えなかったから、相談実績・件数はゼロです、みたいなことにもなってくるのです。

治療に対するご相談が多いとはいっても、お話を聞いて、共に問題を整理しているうちに、ご自分で結論や方向性を見出していかれることが非常に多いです。実は本当の悩みは、最初おっしゃっていた治療のことではなくて、がんになったことで発生した人間関係の変化とか、悩みとか、再発の不安とか、そういう心の問題であることが非常に多いのです。

だから、主ながんの患者さんの相談対応の導入部だけでもお聞きできれば、いつ、何日に、同じがん種のサポーターが来ますよと、シフト表を見て言うこともできますし、ある程度のお話を伺える中から、また違った方向へ話が発展して、患者さん自身が答えを出していかれることも多いのです。

今は、ひと月に1回しかお伺いできない病院もありますし、毎週1回お邪魔しているところもあるのですが、たまたまその日に診察をされた方がピアサポーターと遭遇する、そういうスタイルですよね。ですから、治療のプロセスによって、いろんな問題を抱えたり、解決したり、新たな問題を抱えたりというときに、ご自分自身で解決できなければ、話し合う、語り合うことで、その答えを見つけていく。それがいつでもできるということが一番理想的な形だと思うのです。だから、あくまで我々の希望ではあるのですが、ピアサポーターが病院に常駐して、病院の方々と連携協力を図りながら、患者さんと同じ立場で患者さんをサポートしていけるようになればいいなと思います。」

●院内ピアサポートの場所

「院内ピアサポートの相談窓口は、相談支援センターの方が窓口となって、いろいろとつながりながらやっていくケースもありますし、相談支援センターとつながりながら院内ピアサポートをしている病院で、なおかつ、その窓口は事務方がお引き受けいただいて、いろんな連絡調整をしていただける病院もあります。中には、ドクターが窓口になって、ピアサポートをしている間中、一緒のブースにいてくださって、医療的なご相談があるときにはその先生にお願いをして、その場で先生がご相談を受けるという病院もあります。

私たちはだいたい病院のオープンスペースにブースを設けて、そこで活動しています。ですからピアサポーターが何者かとか何をしているのかをご存じない方が通りかかって、たまたま、『がんの治療体験者のピアサポーターが、がん患者さんやご家族のお話を伺います』という立札を見て、『あ、こんなことをやっているんだ、話してみようか』と思って立ち寄られるケースが多いですね。

なぜオープンスペースかということもあるのですが、やはりですね、個人情報の問題もありますけれども、がんのピアサポートというのは同じ立場なわけですから。密室でしかできないとか、扉一枚くぐる勇気が持てないということをたくさんの方からお聞きするのです。この名古屋市がん相談情報サロン(ピアネット)にも、半年、1年以上前のしわくちゃになった記事を握りしめて、やっと来れたという方がいらっしゃいますけれども、最初の一歩をなかなか踏み出せない方が多いということを、私たちは経験上知っていました。ですから、たくさんの人の目につくところで、気軽に立ち寄れるような、オープンスペースでやらせてくださいと、ご依頼のあった病院にはお願いをすることにしています。

個人情報の問題はどうかと思われる向きもあると思ったのですが、やはりきちんと立札を掲げてやっているからには、患者さんは、がんの相談をしているということがわかってもいいという、1つの意志を持って来られる方々なので、それはいいのではないかと思ったのです。ストレートにブースに来るのではなくて、ちょっと離れたところに机を置いて、抗がん剤治療を行う人、もしくは行っている人が脱毛する時にかぶっていただく清潔なタオル帽子というものをボランティアで作っているのですが、そうしたものを並べたり、国立がんセンター(国立がん研究センターがん情報センター)からいただく無料の冊子などを配置して、そこにピアサポーターが立っていると、そのことに注目されて立ち止まって患者さんがいろいろとお話をなさる。そういったところからがん相談をやっていますということで、それならちょっと聞いてほしいことがあるというようなことに、自然に発展をしていくのです。

ですから、あくまでがんになったことを知られたくない、相談していることも知られたくないという方には、オープンスペースはふさわしくないかもしれませんけれども、それでも2時間半ぐらいで、がんの専門病院ですと15人以上、そうでないところでも10件前後のご利用者がありますから、ニーズは非常に高いと思っています。

オープンスペースでがん相談というのは、他の県の方や他の患者団体の方の感想としては、『よくオープンスペースでご利用がありますねぇ』ということを言われるのです。ですから、ある意味土地柄というか、名古屋市の場合ですと、半数が市外とか県外の患者さんだというように聞きます。ですから、地縁・血縁がわりと希薄だということが都市の特徴ではないかなぁと思うのですが。

これが、地域にがん診療連携拠点病院が1つしかなくて、そこにかかっていると、近所の人にも会うとか、会社の人にも会うというような土地柄ですと、果たしてこのオープンスペースでご利用があるのかどうなのかという考え方もできると思うのですね。そうした病院からご依頼をいただいたときに、病院の方々と話し合いまして、その病院では個室でやらせていただくほうがいいのかなぁとも思ったのですが、あえて、オープンスペースでモデル的にやらせていただいたのです。そうすると、やはり結構なご利用があります。でもこれは私どもだけの実践からの感想ですので、これからいろいろなやり方でいろいろな地域で、最適な方法、場所というのを探っていく必要があると思います。」