がんと向き合う

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花井美紀 さん
(はない・みき)
父親の直腸がん闘病をきっかけに患者会の「ミーネット」を主催する。名古屋市と協働で名古屋市がん相談情報サロン「ピアネット」も運営している。会員は名古屋市内外から550〜600名。がんのピアサポーター養成講座を開催するなど、がん体験者だからこそできる支援の在り方を模索し、実践している。
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12がん患者の就労、社会貢献について

「がん患者も働けるんだ、社会に貢献できる、生産できる」ということを示していかないと、だめだと思うのです。まだまだ、がんと縁遠い方々の中には、がんになったら、もう社会的生命というものはなくなるとか、そういうふうに思ってらっしゃる方もいるのです。

先日、愛知県の県会議員の方、30数名の前で、このピアサポート活動について講演をさせていただく機会がありました。そのとき、1人の議員から質問がありまして、『このピアサポーターの養成というのは何回やったんですか?これからもやるんですか?もしくはその必要があるんですか?』という質問を受けたのです。そのときに、やはり必要はあると。で、ピアサポーターの中には少なからず、進行がんを抱えて、ご自身のがんと向き合いながら治療を続けながら、ピアサポートの現場に立つ人もいると言ったときに、少し『おおっ』というふうなどよめきがあって、ざわざわしたのです。だから、そのご質問が出るまで、私も伝えきれていなかったと思うのですけれども、再発・進行がんの方々は、そんな活動はできないというような先入観があったと思うのです。だからその意味ではいい機会をいただいたと思います。再発・進行がんと上手に向き合いながら、ピアサポートを続けている人も少なくないのです。

がんになっても、その人が自分らしく生活できるということを、新しくなったがん対策推進基本計画でも謳っているわけで、まさにその通りだと思います。今、全国的にピアサポーターの養成を、県が事業として行ったり団体が行ったりと、さまざまな形で進んでいますけれども、そのピアサポーターの受講者の募集にあたって、例えばがんが治癒した人であるとか、そういったことを条件にしているところもあると聞いています。活動の継続性を重視していくのならば、そうなのかもしれないですけれども、やはり、例えばステージ1で、手術をしたらあとは何の治療もしなくていい、そんな素晴らしいことはないですけれども、再発や転移を繰り返されて、そのときどきの局面を自分自身でも一所懸命情報を探し、医師と一所懸命話し合って、局面を乗り越えて行く、そういった経験をされた方の、ある意味豊かなスキル、そして、がんと向き合う姿勢というのが、必ず患者さんやご家族のために役立つと思うのです。

もしかして再発・進行がんを抱えて、ピアサポートの現場に1年しか立てなかったということがあるかもしれません。中には中断しながら、というケースもあるかもしれませんけれども、単に継続性だけに目を向けるのではなく、やはり1人のがん患者さんが、自分らしく生きるための支援をするということが、社会には必要なわけですから、もちろんそういった方々にも、サポーターの道は開けますし、より多くの方がそういうことを目指してご自分自身の闘病も前向きになれば、こんないいことはないのではないでしょうか。」