「私はもともとお腹があまり丈夫ではなくて、昔から何かあるとお腹を壊すことがよくあったので、『お腹の具合が悪いのはいつものことかな』とあまり重大には思っていなかったのです。それがだんだん、便秘がちになってきて『便秘ってこんなにつらいものなのかな・・・』と思い、それでも市販の便秘薬を買って飲むのは怖いものがありました。なのでわざわざお医者さんに行って便秘の薬を出してもらって飲んだのですが、それでも出ない状態。体はえらくなる一方で、その頃からなんとなく微熱もあるようで、仕事には行けたのですが、帰ってくると『ちょっと横になっていいかな』と、そんな日が続いていました。
あるとき『こんなにえらくては、ちょっとしんどい』と思い、近所でも比較的大きめの病院に行って血液検査をしてもらいました。すると『白血球の量が普通じゃない。便秘がちではなかったのに急に便秘になったというのは、明らかにお腹のあたりがおかしいから、詳しく検査してもらえる大きい病院に行きなさい』と言われました。
だけど本当につらくて、その週末、救急外来に行きました。病院で症状を聞かれて、月曜日から外来で診てもらおうと思っていた検査をその日のうちに全部して、そのまま入院になりました。」
「2週間は続いていましたね。本当につらかったです。便秘がちの人のつらさって、こんなにつらいものなのかと思いました。」
「お腹にたまると思うともう食べたくないので、食べてもほんの少しでした。夏だったので、夏バテもあるかなと勝手に思っていました。」
「熱は37度台がずっとありました。やっぱり微熱はちょっと怖いじゃないですか。それもあって、どこか悪いのかもしれないなと思って、ちょっとずつだんだん大きい病院になっちゃったんですけど。」
「入院している最中に一度とてもお腹が痛くなったことがあって、『どうしよう・・・』と思っているときに、看護師さんが部屋を回ってきてくれて『どうしたの?』と言うので、『すごくお腹が痛いんです』と言うと、もう慌てて先生を呼びに行ってくれました。何かが詰まっているとしかわからず、とにかくお腹を温めて看護師さんが背中をさすってくれて、ということが1回ありました。何だったんだろうと思うんだけど、今思うと(腸の中が)詰まっていたんですね。
結局、手術まで3週間ぐらいありました。私なんか素人だから『わかっているんだったら早くして・・・手遅れになったらどうしてくれるの』と思うじゃないですか。でも特に大腸がんは進行が遅いらしく、大腸にポリープができた場合でも、5年ぐらいかかってがん化するそうなのです。なので『数ヵ月のうちにとればいいよ』という感じでした。」
「腸の中にできていた腫瘍が硬い膿(うみ)で覆われていて、それで食べたものが流れなかったそうなのですが、膿で包まれていたから(がんが)散らばっていなかったらしいんですよ。すごいと思いました。だから白血球が高いというのは、要は膿が腫瘍を取り巻いて塞いでしまっていたようで、感謝ですね。」
「翌月曜日から手術が終わるまで、そのあとしばらく家にいたから、(2006年8月末ごろから)11月半ばくらいまで仕事を休みました。
有給休暇も使い果たして、もう欠勤になっていたんですけれども、なにか不思議と『絶対に仕事は復帰する』と思っていて、『元の生活に戻るんだ』という気持ちはすごくありました。まだ確実に『がん』と言われたわけではなかったけれど、仕事場の人には、『きっと私は間違いなくがんなのですが、仕事は戻るので』というメールを送ったのです。もらったほうはびっくりで、『こ、これってなんだろう』と。お見舞いに来たときに、『あのメールはなに?』と言われて、『やっぱり直腸がんでした。だけど仕事は復帰するので、その間お願いします』と言いました。
突然の入院で、仕事のほうは代わりにやってもらっていたので、たぶんたいへんだったと思います。同じ課の人たちが、自分たちの仕事もありながら少しずつ手分けしてやってくれたので、すごく助かりました。今、忙しくても何か手伝ってあげられるようなことがあれば、『あのときはいろいろしてもらったので、私でやれることならやるよ』という感じです。」