統合失調症と向き合う

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福田一夫さん
福田一夫さん
(ふくだ かずお)
1969年(昭和44年)生まれの45歳(収録時)。大学4年生の時に発症し、3回の入院を体験する。大学卒業後、就職するが病気の再燃により退職。その後、大学院に入り勉学に勤しみ、現在は清掃会社に勤務している。勉強することが好きで、日本経営学会の一員として経営学の研究をしたり、放送大学などで聴講している。一人暮らし。収録時、襟元には日光彫りのループタイが結ばれていた。
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11現在の仕事
Q.現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください

「その後学籍が無くなって、当然、お金も何も使い果たしてしまいましたので、生活費を稼ぐためにも、どうしようもなくて、ハローワークの職業訓練を受けました。今、職業訓練を受けると、給費(給付金)が出ますね。これをもらって生活をしようとしたわけなのですね。これが3か月間ありまして、4月から始まって7月で終わります。

で、終わった次の日に、今の会社に勤めるわけです。この仕事に就いてもうすぐ5年目に入ろうというところです。数百社の面接を受けていました。それで、当然郵便局に、また頭下げに行ったりしても、やはり無理でしたね。

で、(現在は)清掃業ということになるのですけども。清掃業というのは、自分でやってみるまではそんなに思っていなかったのですけども、スーパーの清掃ということで、スーパーの客の入りにも影響するし、売上にも当然、貢献する、影響するものですね。で、お客さんも入ってきてきれいだったならば、感動はしなくても気分が良いし、店員さんも気分良く働ける。そして、何よりも清掃した自分がいちばん気分が良いわけで。そういった意味で、人に感動を与えられる仕事なのではないかと思っています。」

Q.精神障害をお持ちの方が就労できるために必要なことは?

「精神障害者が働くようになるためにと言うと、3つ、乗り越えなければならないことがあると思います。1つは、企業経営がどう向き合ってくれるかということと、精神障害者本人が、どういうふうに仕事に向き合えるかということ、そしてそれを取り巻く社会情勢、この三者三様の条件があると思います。

今、精神障害者の働くというか就労が継続しないとか、実現しないというのには、多くの場合は、企業の理解がないとか、また就労した企業自体に合理的な配慮がないみたいな、すべては相手が悪いみたいな議論が多くなされていて、精神障害者本人が悪いということはなかなか言われない。または、取り巻いている社会に理解が無いとか、そんな感じで終わっています。そういうことが多いと思います。

社会情勢に関しては、どうしようもないところがあって、これをどうのこうのと言ってもしょうがないのですけども。企業の配慮というのも、企業は相当勉強していますから、いろいろ考えてくれているのですね。だけども、われわれが望むような配慮があるかと言うと無いのは事実なのですけども…。私が思うに、いちばん改善しなければならないのは、精神障害者の心、仕事に向き合う態度とかそういうものなのだと思います。

精神障害者に『あなたは、働けない理由はなんだと思いますか?』と聞きますよね。その時に、あなた自身の問題みたいなことで、『それは甘えなのですか?限界なのですか?』と質問しますね。そうすると多くの精神障害者は『甘えていない、限界でもない、私はもっと能力があるんだ』と言うのですよ。だけど『それではなぜ働けないのですか』というふうにさらに聞いていくと、やはり、『合理的な配慮がない』だとか、そんなことを言い出します。

会社が、例えば、ジョブのマッチングができて、使ってもらえたとしても、そこで働く態度が、『障害者なんだからちょっと甘く見てよ』みたいな考え方で働いてしまうのではないかと思います。それを見ると、多くの会社というのは、『んー、やっぱりダメだ』みたいな感じになっていってしまって、その後就労がうまくいかなくなっていく。そんな現実があると思います。

この支援、この種のものを解決しようとしていろんな人が研究して、その中に職業リハビリテーションというのがあるのですけども。ま、短時間から始まって、徐々に慣らしていったほうがいいだとか、そうするのが重要だとか、こういう議論を展開して今日まで来ています。

私もたしかに現在の職場で、会社の事情に合わせて、最初は4時間でした。それから4時間半、6時間という感じで、会社の人の配置の関係でそういう事情で(時間が)延びていったのですけども、たしかにそれはやはり好都合でしたので、それは重要だと思います。

あと言われているのは、精神障害者は一人で仕事するのが良いということとか、配置転換もしない。要するにジョブローテーションをしないというのは、経営的には問題なのでしょうけども、そういったことが言われています。

これがされたとしても、なかなか精神障害者が定着できないという事実があります。それはなぜかと言うと、私が思うには、いきなり長い、定めのない職種に就いてしまうからであって、最初は、短期間で完結のアルバイトではないけれど、そういうのをいくつかこなしていって自信をつけて入っていくと良いのではないかと思います。このための話が“定着支援”ということになるのでしょうけども、こういうことを話すと『ありますよ』と言われるのですけども、あるというのは知的障害者に関して言っているだけであって、精神障害者にはこういう社会資源は、無いのが事実だと思います。

で、私もそうですけども、休み時間とか昼休み、これがものすごく課題なのですよ、精神障害者が働くということに関して。この時間がうまく乗り切れないと、すべて仕事に反映してきまして、仕事もうまくいかなくなってしまうということで…。でも、これは精神障害の人、ものすごく苦手なのですよ、人づき合いが苦手な人が多くて。ここら辺のところをケアしてもらうようなあれ(こと)がないと、だめなのかなぁ。まあ、精神障害者自身ももっと人間力を磨いていかないと(いくことが)、必要だと思うのですけども。」

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