「仕事はもう退職をしました。パソコンさえあれば自宅から仕事ができる仕事だったので、手術をしてまた1週間ぐらい経ったら仕事をするつもりだったのですが、継続治療が必要だということですぐに退職をしました。」
「おそらくパートタイムでやったと思います。フルタイムでというのは無理だけれども、私の辞めたときの状況からすると、私の上司はおそらくパートタイムで仕事することは許可してくれたと思います。『治療に集中して、半年ぐらいで戻ってくる』と言えば、おそらく彼は仕事は置いておいてくれたと思います。」
「実際、私の同僚で乳がんになった子がいて、彼女は1年間治療したのですが、その間彼女のポジションは会社が置いておいてくれたんです。上司が『戻って来い』と。彼女は1年間治療して、実際今パートタイムで戻っています。まだ32歳だから、やっぱり仕事はすごく生きがいなんですよね。会社側が『待っているから』と言ってくれるのはすごくありがたい。
オーストラリアではたぶんこれはまれじゃないと思うんです。というのは、他の会社の同僚でやはり大腸がんになった子がいて、彼もやっぱり同じように、『絶対戻って来い』と上司に言われて、実際に戻ってきました。」
「それ(会社が待っていてくれるというの)はすっごくありがたいこと。企業としては経済的に打撃を受けるからなかなか難しいんですけど。病気と闘ううえでもすごく助かるし、あと周りに対してもすごくポジティブなメッセージを送っているんですよね。たぶんそういうこと(会社の実際の対応)もあって、がんに対する認識が非常に高いんです。
たとえば私も病気になったときに、『そういえば前の同僚が大腸がんになって、1年後に仕事場に帰ってきたな』とすぐに思い出しました。『彼、頑張ってた。頑張ってる。だから私もできるかな』と思えるんです。オーストラリアだと本当によく聞きます。
企業側は経済的負担があっても、とにかく助けてあげることを当たり前のこととしてやっている、という印象がありました。
私は少し大きな企業にいたからだと思うんですけど、『がんだから辞めてください』というのはあまり聞かないですね。逆にみんなでサポートするという余裕がある。」
「病気になったことは、自分から同僚に言いました。上司にも自分で言ったし。それを憚る雰囲気は本当に全くないんです。退院して4週間ぐらいして会社に行って、同僚に『がんだから』と言ったら、びっくりされましたけど。でも全然おかしいことじゃないし、恥ずかしいことじゃない。自分は悪いことはまずやっていないと。
私が日本で思うのは、がんになりたくてなる人はいないのに、なぜか社会の端っこに置いてしまう雰囲気がありますよね。それはおかしいと思うし、私は障害がありますけども、それは別に恥ずかしいことでもなんでもないと。人は病気になることもあって、それを全くオープンにできる雰囲気は、確かにオーストラリアにはありますね。
私の経験から言うと、『がんになった』と自分で言うことはすごく度胸がいるんです。お医者さんから『あなた、がんだから』と言われるのと、自分で『私がんです』と言うのは全く違うことで、私にはそれが(日本では)1年近くかかったんです。自分で『がんです』と言うのはすごく度胸がいる、というのは自分で認めないと言えないので。でもそれを隠す必要はない。隠すというのはたぶん日本だといろんな偏見があったり、仕事を失うかもしれないという不安もあるし、経済的不安もあるし、だから隠すんですけど、基本的に悪いことは何もやっていないので、私は隠すことではないなと思うんです。ちょっと私考え方があれかもしれないですが。」