「今は結構快適です。ただ私にとっては住む国が変わったということよりも、独立して住んでいたのが、両親と一緒に住まわしてもらうということが、やっぱり子供としてはすごく情けないです。そういう精神的な葛藤は結構あります。でもその部分が薄らいできて、今は楽です。
やっぱり自分が強くなったんでしょうね。あと現実を受け止めるということが、ある程度できつつある。現実を受け止めるのは本当に最近やっと『ちょっと大丈夫かな・・・』というぐらいなので、まだ全然ですけどね。」
「私は今まだたぶん動揺している時期で、このお話を受けるのは『ちょっと時期尚早ではないか』と思って、患者会の友達にも相談したんですね。正直なところ1年半というのは、がん患者としては若輩なので、早いなとは思ったんです。
ただ自分のことを話すというのは、自分のことを理解するうえですごく役立つんですよね。特にウェブサイトに載った活字を見て、『あぁ・・自分なんだ』と思うと、自分が納得するんですよ。だから私はそのためにも、お受けしたほうがいいなというのも半分ありました。
やはり現実を受け止めないと前に行けないんですよ。すごくたいへんなのは、『過去のことばかり考えてしまう』もしくは『将来のことがすごく不安でしょうがない』。そうすると結局、現実が見えていないので、前に行けないんです。だから私はその現実を受け止めるための努力をしたいんです。
退院したときにご飯を食べに行ってくれた友達(乳がん体験者)が、『カウンセリングに行ったほうがいい』と言ってくれたんです。彼女が言っていたのは、『(カウンセリングを受けて)現実を受け止めるのが早ければ早いほど、前に行けるから』と言ってくれたんです。それはすごく大きかったですね。
がんになってしまうと、本当にもう後悔しまくるか、昔のことを考えすぎるか、インターネットでサーチをしすぎておかしくなっちゃうんですよね。私もそういう時期があったので。そういう時期はあるべきだと思うんだけれども、できれば早く進めたほうがいいですよね。」
「特に私は本当にかなりまずい状況だったので、すごく焦ったのは、『なんで自分がこういうことになったのか、死ぬ前に知りたい』と思ったんです。しかも時間が非常に限られていたので、正直なところその答えを見つける前に自分は死ぬんじゃないかと思ったので、それがすごく不安だったんです。でも気づくともう1年半経っているんですよね。
今の答えとしては、『なんでこうなったのか全然わからない。答えはない』ということで落ち着いたんです。答えがないというのは、いいことなんですよね。答えがないというのは、結局、将来どうなるかの答えもない。この現実のところに踏みとどまって、一歩一歩進んでいくことで、将来があるんですよね。だから実際『がんになった』ということを理解するのが早ければ早いほど、確かに前に進むのは早いと思う。ただ私の場合、もうステージが4なので、時間が限られているから非常に焦った、でも焦ってよかったと思うんです。
本当にしんどかったけども、今でも本当にしんどいですけど、正直なんでこんなことになったのかなと思いますけども、しんどいながらも時間をもらったことが本当にありがたいです。」
「今でもすごく焦燥感があるというか、すぐに焦っちゃうんです。忍耐強さもないと自分でわかるので、それでうつというか、精神的にまだ弱い状態だなというのは、自分でよくわかりますね。
ひとつは、すぐに頭がいっぱいになってしまって、順序立てて考えるのがすごく苦手になるんですね。病気になる前だったらたとえば1日に100個やることができたのが、今は10個しかできないとか。前はすごく自信がある性格だったので、それが自信がなくなっちゃったんですよね。吹っ飛んで何もできなくなっちゃったという気持ちが多かったんです。」
「まず優先順位を決めるんです。今日やりたいことを決めて、優先順位を決めます。たとえば1週間で、今日はインタビューがあるから、その前の日は絶対に何もやらないとか、そういうふうに決めるんですね。どれが大事だから、そのために2〜3日前はあまり何もしないとか。精神力、体力の限界が自分でもだいたいわかっているので、それを考えたうえで予定を立てる。優先順位をつけて、どうでもいいことはもう考えないと。」
「自分は宗教は全然信じていなくて、あまり非科学的なことも信じない。ただ本当にもう『自分しかないな』というのが本音です。ちょっと傲慢に聞こえるかもしれないけども、もちろん助けてくれる両親、家族、友達もすごく大事だけども、結局、病気になったのも自分、治療を受けるのも自分、これから生きていくのも自分なので、もう自分しかないです。
私も神社とかそういうところは行きますけど、結局、私がいちばん信じているのは、自分が今までやってきたことを信じているんです。この1年半はすごくしんどい思いをして、今でもすごくしんどいけれども、結局生きてますよね。生きているのは自分で、その自分の精神や心はこの体にあって、この体は自分の体なので、1年半を超えて頑張ってきたんでしょうね。いろんなことをやってきて、いろんな人に会えて、とにかく1年半生きてきたということが、自分のほこりで、自分の自信なんですね。結局、これから生きてくのは自分なので、もう自分しか私はないと思う。ただ、周りで支えてくれる人たちに対して感謝の気持ちはすごくあるけれども、でもやはり根本的には自分じゃないですかね。」